「え、王宮…?! どうして?」

 何故唐突に王宮で保護などと言う話になったのか。

「勿論無理にとは言わない…。ただ、心配なんだ。王宮で保護してもらえば安全だから」

「そんな! 大袈裟だよ。わたしならへいき…」

「駄目なんだ…! もし、スズランが…っ攫われるかと思うと俺は…っ」

 ライアはそこで言葉を詰まらせると強い眼差しを送ってくる。瞬時にかち合う二人の視線。
 狭い傘の下で身を寄せた。足元を冷たく濡らす雨も、傘を弾く雨粒の音も気にならない。ただライアの甘い唇に溶かされて周囲の景色がぼやけてゆく。

「……ん、、ライア…っ…」

「ッ…」

 息継ぎの合間にライアの名を呼ぶと、更に口づけが深くなり触れ合う部分から伝わる切ない想いがスズランの胸を打つ。苦しくてもどかしい気持ちばかりが逸る。ライアは腕の力を緩めず僅かに唇を離すと小さく呟いた。

「……俺…。スズランに話さなくちゃあいけない事があるんだ」

「話さなくちゃ、いけない事…?」

「……その、何から話せば良いかな…。俺、本当は……」

「……?」

「っ……」

 何かを伝えようと必死に言葉を探すライア。一体その口からどんな言葉が飛び出すのだろう。