スズランを見るなりライアは目を見張ったまま無言で動きを止めた。

「や、やっぱりおかしい…、かな? 大きさはぴったりだけど、なんかひらひらして動き辛くて」

「おかしくない。すごく……似合ってる」

 似合ってると言われ正直に照れてしまう。お世辞だとしてもやはり嬉しい。

「こんなに高価な服、貸してくれてありがとう」

「ん? 貸したんじゃあない、買った。だから返さなくていい」

「ええっ!? だめだよ、ちゃんとお洗濯して…」

「返されても困るんだけど……受け取って、くれないのか?」

 そう言いながら困り顔で見つめてくるライアに迂闊にもときめいてしまった。そんな顔をするなど反則だ……。それにしてもライアは何故こんなにも良くしてくれるのだろうか。

「そんなんじゃ……あ、ありがとう。でもっ…」

「さあ、そろそろ出よう。スズランも店に戻らないと家族が心配してるだろ?」

「……うん」

 家族……。マスターやセィシェルはまだそう思ってくれるだろうか。

「元気だせよ。俺も一緒に行って説明するから」

「うん……ありがとう。ライア」

「別にいいよ」

 柔らかく微笑むライアに優しく諭されてほんの少し勇気が湧く。