雨は一瞬弱まりを見せたが、また強く降り出していた。

「……まずいな。雨が強くなって来た、移動しよう。スズラン、立てるか?」

 ライアが突然見覚えのある傘を開き、スズランをその下へと招き入れた。

「……え、これわたしの傘!? なんでライアが持ってるの?」

「この間マスターが貸してくれたんだ。なかなか返せなくて悪かったな」

「そうだったんだ、びっくりした」

「……少し歩くけど平気か?」

 無事にライアに会う事が出来、伝えたい事も半分だが言えた。もうそろそろ酒場(バル)に戻らないといけない。

「え? ええっと、どこかに行くの? わたしそろそろお店に戻らないと…」

「今から城下街に戻るには時間が遅いし雨も強くて危険だ……この先に宿があるから取り敢えずそこへ行く」

 少し強引なライアの提案。有難いが便乗する訳にはいかない。それにライアは先程まで恋人と逢引中だった筈だ。

「い、いい。わたし一人で帰れるからライアはさっきの人の所に戻って…。デートの邪魔して、ごめんなさい……」

 急に訪ねた事で二人の邪魔をしてしまったのだ。罪悪感と嫉妬の感情が渦巻いてスズランはぎゅっと眉を寄せた。