煽られていると分かっていてもライアの事だと気づき目の前がカッとなった。

「じゃ、じゃあその酒場(バル)の場所。知っていたら教えてください…! わたし、ライアに会いに行きます!」

「アハハ、鈴蘭は随分と容易いね。それにこっちから振っておいてなんだけど、後悔すると思うよ」

「そんな、後悔ならもう……」

 今、スズランにとってこれ以上の後悔などあるだろうか。このまま中途半端な気持ちでいる方が余程辛い。

「鈴蘭が何を見ても、僕は責任を取らない。行けば君の想いとやらはきっと粉々になるだろうね。そうすればこの暗示の魔術は永遠に解けない。君の〝欲望〟はそのまま闇の中へと葬り去られる。むしろそれが僕の狙いだけどね」

「……その方がいいのかも。何もしないでただ後悔してるよりも、その方がすっきりするかもしれないでしょ?」

「ふ……魔術の解き方も知らない癖に…。馬鹿みたい───」

 不意に目の前が明るくなり、瞳孔の奥に眩しい光が鋭く押し込まれる。

「っ…ぁ!」

 瞬間的にこの数分の〝出来事〟が強い光に覆われてぼんやりとしてくる。
 目の前でゆるゆると頭を振り、ハリが立ち上がった。スズランも膝を立ててゆっくり立ちあがる……。