刺す様な冷たい視線を間近に感じる。強くなる目眩に息切れを起こしながら、それでも何故かスズランの口は止まらなかった。

「そ、それに。嫌な事を忘れても、また同じ事をしてしまったら……その方が悲しいもの…」

「アハ……僕に対するその反抗的で生意気な態度、相変わらずだね。それにしても本っ当に煩わしい…。ねえ、鈴蘭はこの不快な頭痛と耳鳴り、どうやって止めるか知ってる?」

「…っ?」

 上弦の三日月の如く美しい弧を描いたハリの唇。その笑顔にぞくりとした。勿論そんな方法知る由もなく左右に首を振るしかない。

「……少し面倒なんだよね。僕だって自ら手を汚したい訳じゃあないし…。まあ、君が不憫な花嫁って事は認めてあげる」

 ハリは微笑を浮かべたままスズランの頬に触れた。凍りつく様な冷たい指先に驚き咄嗟に振り払う。

「いやっ…あなた、一体誰なの?」

「僕は玻璃(ハリ)。父親が勝手に決めた君の…っ痛ぅ……くっ、このガラクタさえ無ければ…! う、ぁ…っ」

 ハリはまた眉間を指で抑えると苦しげに呻いた。
 この互いに共鳴し合う様な頭痛や目眩。本当に止める方法があるのならばスズランも知りたかった。

「ハリ……さん」