ユージーンの優しい声に張り詰めていた心の糸が緩む。ついに目の前がぼやけ、堰を切った様に涙が溢れ出した。

「マスター…」

 ユージーンは部屋に入って来ると椅子に食事の乗った盆を置いてベッドの横に屈み、何も聞かずに目線を合わせてくれた。

「……もう少し休んだ方がいいね。スズにはまだ店の仕事はきつかったのかな?」

「ち、違うの! 酒場(バル)のお仕事はとってもやりがいがあるし、楽しいの!! わたしこのお仕事だいすきだよ…!」

 スズランは思い切り首を振るとユージーンの問を否定した。それでもやはり困った顔をさせてしまう。

「そうか…。そう言ってくれて嬉しいよ、ありがとう。ただ俺はね、スズの事が心配なんだ。スズが困ったり、危険な事が降りかかるなら俺もセィシェルも全力でそれらから守りたいんだ」

「…うん」

「でも、だからと言ってスズを縛ったりはしない。スズが心に決めた事ならば、やりたい様にやってごらん? 俺はスズに色んなものに触れて、色んなことを感じて欲しいと思ってるよ」

「っ…うん」

「スズが何か好きな事を見つけたら、その時ももちろん全力で応援するよ。スズは俺の…、大切な娘だからね」

「マスター…っわたし…」