セィシェルが立ち上がろうとしたので慌てて首を横に振った。頭痛で頭が割れる様に響いたが、構わず全力でセィシェルを引き止める。

「ま、まってセィシェル…! わたし…」

「あ? 何だよ、じゃあ水飲むか?」

 セィシェルが水差しを手に身体を少し起こしてくれた。

「ありがとう…」

 水差しの水を口に含んだ瞬間、喉が潤い全身の乾きにも染み渡っていく様に感じた。耳鳴りはまだ若干残るも不思議と頭痛が引いてゆく。

「馬鹿、ゆっくり飲めって。お前四日も寝込んでたんだからな…! ほんと心配かけやがって」

「そ、そんなに?」

「まだぜんぜん治ってなさそうだし、飲んだらまた横になってろよ。ほら…」

 強引に枕へと押し戻される。
 正直時間の感覚が分からない。眠っていた間ずっと夢を見ていた様な気がする。長い間何かを求めては見つけられずに落胆する夢を……。
 それが夢なのか現実なのかも分からない。
 得体の知れない不安感に身震いする。

「…っ」

「……うなされてた。やな夢でも見たのか?」

「違うの、ひとりぼっちで…。怖かったの」

 妙な沈黙が訪れる。セィシェルは腕を組んで黙ったままいつもの不機嫌そうな表情で視線を落としている。