けれど、これは自らが作り出した幻に違いない。そう思うと心がずしりと重くなる。ユージーンや、セィシェルの優しさを無下にしている様に感じて申し訳ない気持ちになってしまう。
 それでもスズランはこの夢に出てくる場所と人物がどうしても嫌いにはなれないのだった。

 ただ、不安なのだ。
 本当は大好きなのに。

 宝物の様なこの夢が───。



「───スゥ!」


「おいで、俺がパパを探してあげる」

 確かにそう、言ったのに。
 約束を守れなくてごめん。

「お利口にしてたら迎えなんてすぐだ」

 そう言っておまじないをすれば、君がまた笑ってくれると思ったんだ。

 花が綻ぶ時みたいに笑う君の笑顔に俺の心は救われたから。前に進む事が出来たのも、俺の心の奥底にはいつも君の存在があったから。

 だからいつも、俺の傍で笑っていて欲しい。
 今度こそあの約束を果たす為に、君を守る。

 もう一度出会えたんだ。絶対に離さない。


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 ───────

「ッ…スズラン? 居るのか!?」

 咲き乱れる野花と美しく流れる小川に架かる小さな石橋。必死に名前を呼ぶ者の姿を捉えて恐る恐る背後に近づいた。