申し訳無いと思いつつもそんなユージーンに甘えてしまう。

「うん。ずっと森の中で、ひとりぼっちなの……誰もいなくて、、ひとりでずっと…」

「大丈夫。スズはひとりぼっちじゃあない。俺もセィシェルも居るから、スズに何かあったらこうして傍に居るよ? だから安心してもう少しお休み?」

「で、でも……」

「スズが眠るまで手を繋いでいようか?」

「……ううん。平気、ありがとうマスター」

 また少し困った表情になるユージーンを見つめてスズランは首を横に振る。困らせたい訳ではないのだ。
 ただその時は、もう一度眠りに落ちたら二度と目が覚めないかもしれないと……何故かそう思ったのだ。しかし優しげな手つきでスズランの髪を撫でるユージーンに安心し意識は微睡んでいった。



 ───夕暮れに染まる樹々。

 幹を揺らし葉音をならす風。
 小川に架かる小さな石橋と川岸に拡がる美しい花畑。

 これは〝いつもの夢〟

 こわい夢だなんて嘘だ。

 本当は怖くなんかない。何故ならこの夢には暖かい太陽の様な笑顔を浮かべてスズランを励ましてくれる人物がいるのだから。
 止まらない涙を止める為〝涙が止まるおまじない〟をしてくれる素敵な人が。