本当はとても嬉しかったのだから。それにあの時ライアが来ていなかったら今頃どうなっていたかなど想像したくもない。
 しかれども、感謝の言葉すら満足に言えない自分が情けなくなってくる。こんな奴嫌われて当然ではないか。

「……だったらっ、本当にもうわたしの、事はかまわないでって言って……っふ…、うう」

 段々と惨めな気持ちになってしまい気づけば涙が頬を伝っていた。

「馬鹿。なに泣いてるんだよ…!」

 早く何かを言い返さなければ、とライアを睨みつけようとしたがふわりと目の前が真っ暗になる。いつの間にかライアに抱きしめられていた。

 散々酷い文句を言われた。スズランもむきになって言い返した。しかし今、ライアの腕は優しくスズランを抱きとめている。
 まるで正反対な言葉と態度に混乱しそうだ。

(な、なんで…?)

 その腕はスズランをすっかりと包み込んでしまった。今すぐに離して貰わないと困る。

「……は、離してっ」

「嫌だ」

 ライアはスズランの顔に頬を寄せながら耳元で大きく息を吸い込んだ。その空気の振動に全身がぞくりと痺れる。路地裏で男たちに触れられた時の様な嫌悪感ではなくどこかくすぐったくなる様な痺れだ。