「あいつ、先に帰ったんじゃあないのか? 何考えてんだよ!」
「……」
(な、かんか怒ってる……よね? あ。あたりまえか…、ライアはわたしのこと……嫌いなんだから)
先ほどから少し苛立った様な口調のライアに萎縮してしまう。ライアへの想いは秘めておくと決めた筈なのに図らずもこうして二人きりになってしまうと、非常に気まずくて間が持たない。
この想いに着地点はない。想いを心の内に秘めると言うのは事の他苦しいものなのだと知った。
それでもこの恋を大事したいのだ。
たとえそれが届かぬ想いだとしても───。
二人は昼下がりの街並みを付かず離れず、微妙な距離を保ったまま歩いていた。終始不機嫌そうなライアとの会話は全くと言って良いほど弾まない。
(なんでわざわざ送ってくれるんだろう…っ無理しなくたっていいのに……)
嫌でも嫌われている事を再認識してしまい無性に悲しくなった。気を紛らわそうと周りの風景に気を向ける。来た時とはまた違った顔を見せる街並みに目を奪われ、つい落ち着きなく瞳を動かしてしまう。
「お前、あまり街に来たことないのか?」
あまりにもきょろきょろし過ぎかと恥ずかしくなったが、ここは正直に答えた。