「ああ、スズランちゃん。この男は全然そう見えないから驚くかもだけど、これでもこの国の王…っむが!?」

 何かを言いかけたジュリアンだが突然ライアがその顔に掌底打ちを喰らわせ、その発言を阻止した。そして内緒話をする様に二人で何言か言葉を交わす。

「!?」

「あー、えーと。この男は俺の弟みたいな存在って言うか……うーん」

「国王陛下の為に様々な情報を集めるのが俺の仕事だ……断じてロリコンでも変態でもない。人攫いなんて以ての外」

「そうそう。断じてロリコンでも変態でも…ってお前、何言ってんの?」

 気になっていた事が一つ解決したのにどうしてか気分は晴れない。解決した所でライアに嫌われていると言う事実は変わらないからだ。

「……そう、なんですか」

「なあ、ジュリ。悪いけど先に戻っててくれる? 俺はスズランを送ってから戻るから」

 心ここに在らずな返事を返した所、何故かライアがそんな事を言い出したので慌ててそれを辞退した。

「えっ!? あ、あの。わたし一人で大丈夫です! ちゃんと帰れます…! それにセィシェルの事を探さないと」

「それで? 会えずにまたさっきの奴らと鉢合わせでもしたらどうするつもり?」

 ないとも言い切れない可能性を耳にした瞬間、スズランは恐怖にまた身を強張らせた。

「でも…」

「えー? じゃあ俺も一緒に送ってくよ? 方向的にも一緒じゃん!」

「ジュリが一緒だとまた何を言い出すか分からないからな」

「へーぇ…! 知らなかった。お前って意外と独占欲強いのかぁ。……さては俺が邪魔者って事だろ?」

「なんの事だよ! 一応、広場を一周りしてセィシェルが見つからなかったらそのまま酒場(バル)まで送る。それならいいだろ?」

 何故か二人で勝手に話を進めた様な気がするが、スズランは仕方なく頷いた。

 それからライアと二人で人通りの多い目抜き通りの広場を一周りしてみたが、セィシェルとは遭遇出来ず結局酒場(バル)まで送って貰うことになったのだった。