突然路地に入って来た男の姿に、スズランはまた身を強ばらせた。

「悪いジュリ…! こいつがその二人組に此処で絡まれてたんだ。スズラン、大丈夫だ。この男は民兵護衛警備隊の…」

「ジュリアンと申します! 今日は非番ですが、この街の皆さんの平和と安全をお護りしております。お嬢さん、お怪我はありませんでしたか?」

 ジュリアンと名乗った男は礼儀正しく警備隊の記章を見せ、自己紹介をした。

「おい。ジュリ! 何で突然割って入ってくるんだよ」

「だって、この子めちゃくちゃ美人な上に超可愛いじゃん! ちゃんと自己紹介しとかないと俺の気が済まないぜ! で、お前こそ何処でこんな可愛い子と知り合ったんだ?」

「……ああ、王宮の近くにFruto del amor (愛の果実)っていう酒場(バル)があるだろ? その店の店員だ」

「……あ、スズランと言います。警備隊の方なんですね、助けていただいてありがとうございます」

 警備隊。そう聞いてスズランは深々と頭を下げた。もちろんあの森の警備員を思い出したが、何となく親近感を芽生えさせるジュリアンの雰囲気がそうさせたのだろうか。

「そっかぁ、スズランちゃんね! 俺も今度その酒場(バル)に行くからおまけしてね〜」