「……ちゃんと金払うんだろうな?」

「当然だわ。いただきます」

 セィシェルの刺すような視線の中、何事も無かったかの様に銀盆を受け取り美しい所作で料理を口に運ぶエリィ。しかしものの数分でぺろりと全てを平らげてしまった。

「──っとっっっても美味しかったわぁ!! これっておかわりアリ?! て言うかこれ作ったの貴方なの?」

「は? そうだけど」

「貴方、天才じゃあないかしら! こんなに美味しいご飯を作れるなんて!!」

「な、何だよ急に! こんなん誰でも作れんだろ。それにスープは親父が仕込んだヤツだから美味いに決まってる」

「おかわりよ! お支払いなら弾むから!」

 そう言ってエリィはにこやかに空の食器をセィシェルに押し付けた。

「……分かったよ! はぁ、明日から忙しくなるってのに妙なお客だぜ。おいスズ、俺また厨房に戻るけどもう店開けといていいぞ」

「はぁい!」

 店の裏口から外へ出ると出入口の扉にかかる札をABIERTO(営業中)へと返す。本来はこれで正式に開店となるのだ。合わせて本日の品書きを書いた看板を立てかける。すると早速入店待ちをしていた馴染みの客に声をかけられた。

「よぉ! スズちゃん!」