「は? ぜってー駄目。お前すぐに迷子になりそうだもん」

 ぴしゃりと即答されてしまう。

「ま、迷子になんかならないもん! ねえマスター、だめ?」

「うーん…。街は色々危険もあるしなぁ、俺も一緒に行ければ良いけど今日はレフの奴が休みだし…」

「俺は遊びに行くんじゃあねえからな?」

「ちゃんとセィシェルのお手伝いする! お願い…! だって十六歳になったのに一人で街に行けないなんて…」

 大体セィシェルもユージーンも過保護過ぎるのだ。十六の街娘が商店街を一人歩きして何の危険があるというのだ。

「十六になってもスズはまだまだだろ」

「ひどい! セィシェルの馬鹿っ…わたしだってちゃんと大きくなってるもん…」

 頬を膨らませて詰め寄ると何故か目を泳がせるセィシェル。

「ぐっ…分かったよ。連れてけばいーんだろ?! あんまりくっつくなっ…。お、親父。仕方ねぇから連れてくけど?」

「……まあ、遅くならずに戻るならいいよ。でも旧市街の方へは絶対近づかないように!」

「わぁい! マスターありがとう。わたしすぐに支度してくるから待っててね、セィシェル」

 スズランは跳ねる様に自室へと駆け上がり、動きやすい服装へと着替えた。