慌てて口を押さえる。
聞こえてないよね?
南の方を見ると寝ていた。ほっと胸をなでおろした時、うめき声が聞こえた。
「ぅ……」
「…南?」
さっきの苦しそうな声と違って辛そうな…。
「……ん」
「……」
微かに口を動かしていたけど耳に届いた。
今…お母さんって…。
前のお母さん…の事かな…。
「……!」
私は南が寝ながら涙を流していたことに気づいた。
すごく辛そう。苦しそう。
悲しい…。でもとても綺麗。そんな涙だった。
過去に何があったの…?
だめ。私が聞くべきじゃない。
南には御守先輩がいる…。
これ以上…ここには入れない。
私は置き手紙を残し、南の家を出た。