その人が伏せていた顔を少し横に向けた時に俺の予想は当たってた。



りっちゃんだった。


透き通った黒い髪の奥でチラチラと見える長いまつ毛。
小さい鼻に艶がある肌。


こんな可愛いくて愛おしい人が誰だか分からないわけがない。


「りっちゃん…」


「……ん…み、なみ…?」


上半身だけ起こし、俺はりっちゃんを呼ぶと、りっちゃんは目をゆっくりと開ける。

最初はぼんやりとこちらを見ていたけど、だんだん意識がハッキリして慌てた表情になる。

そんな行動でさえ好きだと思った。


「南っ!まだ寝てなきゃダメだよ!!熱あるんだから!」

「何で…ここに?」

俺が聞くとりっちゃんはすらりと言葉を並べた。


「病人を看病するのが私の役目。…だから大人しく寝てなさい」

そう言って、俺のオデコにどこから持ってきたのか冷えピタを貼る。

ヒンヤリしてて、熱い俺の体にはちょうどよかった。

「ありがと…でも、帰っていいよ」

熱移しちゃうといけない。

これ以上そばにいると苦しい。

好きが溢れてくるから。


でも


「帰らない」

「お願い…うつしちゃうから」

「嫌」

「りっちゃん…」

「私を誰だと思ってるの?看護師の娘だよ?このまま病人を放っておくことは出来ないの。…それに」


その言葉でりっちゃんは口を閉じる。
どうしたんだろ…?

「…それに?」


「…私が…南のそばにいたいから」