ウザい駄々っ子な弘也と並んで歩いていく。
体育館に続く扉の前で立ち止まって、振り返る。
「じゃあね、唄子ちゃん」
風が、荒れる。
さらわれた黒髪と金髪が、繊細になびいた。
「証明、できるといいね」
太陽の光に反射して、ギラリと威嚇するみたいに強く光った眼差しで、唄子ちゃんを射抜く。
唄子ちゃんは微笑むだけで、何も言わなかった。
弘也に急かされて、私は校舎の中に入った。
たくましくて凛々しい私の後ろ姿が、唄子ちゃんには猛獣のように見えて、しばらくの間体育倉庫の前から動けなかった。
弘也と自動販売機が設けられた場所へ移動し、頼まれていた飲み物を買った。
お金を持ってくるのを忘れたので、弘也が代わりに払ってくれた。というか払わせた。
剛がコーラで、たかやんがコーヒーで、弘也がいちごオレで、朔がお茶。
私は何飲もうかなあ。んーっと、じゃあ、炭酸ジュースにしようっと。
「僕の少ないお金がああああ」
「ゴチになりまーす」
「なんで幸珀、持ってきてないんだよー!!」
「忘れちゃったんだから仕方ないじゃん」
自分で払わずに済んでよかった。弘也がいてくれて助かったよ。