苦しみが、だんだんと弘也への恋心を型どっていった。
また、初恋を思い出す。
悪い感情ごと、吸収されていく。
私への嫉妬心も、同時に膨らんでいった。
「僕だって、お前とはいえ女の子を殴りたくはねぇの。だからさぁ、さっさと本当のことを教えてくんない?」
唇をつぐんだ唄子ちゃんは、観念したように口の端を緩めた。いつもの、非の打ちどころのない笑顔だ。
あたしはお姫様、ひろちゃんは王子様、幸珀先輩はただの脇役。
唄子ちゃんは心の中で証明の失敗を残念がりながら、何度も何度もそう自己暗示した。
唄子ちゃんが、弘也に真実を教えた頃。
私はまだ体育倉庫の中に閉じ込められていた。
一応、古びた扉と、いろいろと奮闘してみた。
ボール以外にも、棒でこじ開けようとしたり、コーンをぶつけてみたり、他にも窓がないかほこりっぽい倉庫内を探し回ったりした。
そして、現在。
扉の前で腕を組んで考えていた。
倉庫にある物はほとんど使ってみたけど、どれもダメだった。使えないな。もっと他に使える物置いとけよ。
扉も扉だ。おんぼろのくせに、我慢強いな。とっとと開けよ。
「うーん、どうしよっかな」
できれば、今すぐにでも脱出したい。
ここ汚いし、空気悪いし。