つり上げられた弘也の瞳は、鋭く尖っていた。




「わかりやすい嘘をどーも」


「う、嘘じゃないよ!本当だよ!」


「幸珀は信頼を語らない奴なんだよねぇ。ましてや、僕達に助けを求めるとか、あははっ、ないない~」


「普段は言わないんだろうけど、確かにさっき聞いたもん!」




必死に真実だと主張すれば、バカバカしそうに鼻で嘲笑われる。


唄子ちゃんの顔色が、みるみるうちに青くなっていく。




「あのさ~、お前、幸珀の何を知ってんの?」



弘也の殺気に今まで怯んだことのない唄子ちゃんが、初めて唇を震わせた。


きっと、浅はかにも証明されたと一瞬勘違いしてしまった恥ずかしさと己の愚かさが、そうさせているのだろう。




「何も知らないっしょ?言葉よりも行動で表す、憎らしいくらい男らしい幸珀のことなんて、なーんにも」


「あ、あたしだって、知って……!」


「もう嘘つくのやめてくれる~?これ以上嘘つかれたら、お前のこと殴りそうなんだよねぇ」




唄子ちゃんは、どうしてと問いかけようとして、やめた。


どうして幸珀先輩ばかり、どうしてあたしじゃないの、どうして幸珀先輩を特別扱いするの、どうしてどうしてどうして……。



醜い嫉妬が渦を巻いて、苦しめる。