「……え?」
「ひろちゃん?」
かすれた一音に、全ての感情が詰まっていた。
「幸珀が、言ったの?僕達のことを信じてるって?」
「うん。すごく信頼されてるんだね」
唄子ちゃんが演技の涙を拭いながら、微笑ましそうに呟く。
自分の方が上だと確信した今、私の話題の何もかもが面白おかしく感じてならないのだろう。
黙り込んだ弘也に、唄子ちゃんは不思議そうに首をこてんと傾げた。
「ね、ねぇ、ひろちゃん。早く幸珀先輩を助けに行ってあげて?」
すると突然、弘也が笑い出した。
片手で顔面を覆って、そのまま流れるように短い前髪をかきあげる。
唄子ちゃんはわけがわからず、ポカンと固まった。
「ひ、ひろちゃん?どうしたの?」
「あははー!……あいつが、僕達を信じる?んなこと言うわけないじゃーん」
笑いながら吐き出した違和感の正体に、唄子ちゃんは「え?」と目を丸くして、表情筋を引きつらせた。