「僕には、幸珀がいればいい」



善兄は我慢できなくなったのか、私をギュッと抱きしめた。



頭に落とされた記憶の衝撃が疼いて、体に力が入らないせいで拒めない。


今すぐ離れろ変態!!と、たくさん喚きたいのに、できない。



不快感でいっぱいだ。



「幸珀しかいらない」




もしかして、善兄の愛が執着的なのって、あの秘密のせい……?




「だから、幸珀も僕だけを求めて」



だとしても、私の気持ちは変わらない。


今にも私を密室空間に閉じ込めたくて、うずうずしてそうな善兄に、私の貴重な恋心はあげられない。




だんだん、手に力が戻ってきた。


グーパーグーパー、握ったり開いたり。よし、不完全で弱々しいけど、なんとか拳は作れる。



私は精一杯力を振り絞って、拳を善兄のお腹に当てた。


本当は殴りたかった。

でも、これが今できる、最大限の抵抗。