トイレから戻ってから数分。相変わらず騒がしい教室の中で1人ぼーっと過ごしていたら、後ろから名前を呼ばれた。
「おい、美優。」
正体が誰かは振り向かなくてもわかる。
「なーにー」
「お前今日テンション低いな。なんかあった?」
「なんにもないよーだ」
「ははっ、だよな。お前なんかに悩みなんかねーか!」
ばーか。悩みならいくらでもあるっつーの。
「うるさいなー。用は?それだけ?」
「ちげーよ。今度いつ遊べるか聞いてんだよ。」
聞いてるんだよって…聞かれたの1回目ですけど。こんな話してるけど、彼とは小学校からずっと仲良くて。片想いしてたりもして。彼の女の子の噂は絶えたことないけどね。
「魁斗、前言ってた彼女は?いいの?」
「あー、あいつ?んー、わかれた。」
「早っ。早くない?」
「いーんだよ、まず、お前は彼氏いたことねぇのに言うな。」
うるさいな。傷つくよ、その言葉。意外と。
「あー、そんなしょんぼりすんなってー。いちごみるくおごってやるから。勘弁。」
「…うん。」
「じゃあとりあえず後でな」
ばいばい、と手を振って魁斗が群に戻っていった。魁斗はモテるんだ。だからこうやって話したあとは質問攻めにされることもあったんだけど、最近は普通。ふと時計を見たら針はもう授業の5分前をさしていた。でも5限目にはなんとなく出る気がなくて、明にメールだけ送っといて、いつもの場所にいった。

──サーッ。 ピヨピヨ。

この時期の風は、冷たすぎず、熱すぎない、心地よい風が吹く。この風にあたるのが大好きで、たまにこうやってサボっては、音楽を聴いているんだ。
「今ごろ英語か…」
明からメールの返信があった。
『英語ちょーやばい。先生のテンションやばい、涼が質問攻めくらってる。』
英語は好きだ。でも、英語の担任のテンションがたまにだるくて私がサボるのは結構頻繁にある。
おだやかに吹く風にゆられ気持ちよくなってまぶたを閉じた。
ちょっとだけ──