「あいつら、危ねぇだろ」
自転車が去って行った方を見ながら、思わず怒りの声をこぼすと。
「か、楓くん、ありがとう」
噛み噛みのお礼の言葉が、下から聞こえて来た。
「別に──」
そう言いかけて、言葉のどこかで声が途切れたのを感じた。
下を向いた瞬間、すぐそこにあった十羽の瞳と俺のそれとが、ばっちり交わったから。
十羽を腕の中に閉じ込めていたことを、ようやくそこで認識する。
十羽もこの距離は予知していなかったのか、その顔からハッと笑みが消えた。
腕の中にいる十羽と俺の顔の間には、数センチの距離しかない。
肌、白。
相変わらずまつ毛なげぇ。
……キス、できそ。