バス停から手前の十羽の家までは、20分ほど。



俺たち以外人影のない田舎道を、繋いだ手をポケットに入れたまま歩く。



容赦なく体温を奪っていく北風が、体に絡みつく。



「さぶ」



元々寒がりなこともあって身震いしていると、隣から対照的に嬉しそうな笑い声が聞こえて来た。



「ふふ」



思わず漏れてしまったとでも言うような、十羽の笑い声。



この寒さでそんなに元気そうとか、どんな猛者だよこいつ。



「なにひとりでニヤニヤしてんだよ」



「あのね、思いだしたの。
小学校からの帰り道、よく猫とか蝶とか追いかけて、ふたりで迷子になったなぁって。
何度やっても、また繰り返してさ。
で、真っ暗になった頃にやっと家に辿り着くっていうね」