信じられない。意味がわかんねぇ。



だけど、十羽が妙にリアルにこんな嘘をつくとは思えなかった。

これは、長年一緒にいた幼なじみの勘。



まるで日常のなんてないことを話すように、十羽が軽い調子で続ける。



「でもさ、なんで楓くんだけ見えるんだろうって思わない?
楓くんにだけは、触れることもできる。
私もなんでだろうって思った。
けどね、わかったの。
私が楓くんに対して未練というか、心残りがあるからなんじゃないかなって」



一文字一文字を頭の中で咀嚼し理解するのに時間がかかるから、十羽の言葉を取りこぼさないように必死で、相槌を打つことすらままならない。



「中学の時、楓くんにお別れを言わずに離れてしまったことを、ずっと後悔してた。
だから、死んだ後、楓くんの姿を見に行ったの」



十羽がその時のことを思い返すように、まつげを少し伏せた。



まつげの下がり具合と反比例するように、十羽の語り口は明るくなる。



「久しぶりに見る楓くんは、女の子ばっかりに囲まれてるし、雰囲気も変わってるしで、すっごく驚いたんだよー?
なんだ、楓くん元気そうだって。
むしろ、楽しんでそうだって。
ちっとも私のことなんて覚えてなさそうで、ちょっとっていうかだいぶ寂しかったけど、それでいいんだって思った」