【叶翔side】


あれから、かなりの月日が経ち、何度目かの春が来た。

俺は現在。

夢だった、心理相談員という仕事をして、有意義に過ごしている。

冬華の最期の願い、生きてと言われたとうり一生懸命生きて、生活している。

そして、今、仕事場まで徒歩でむかっている。

すると、目の前を歩いていた、高校生と思われる女の子がハンカチを落とした。

だが、彼女は気づいていないらしい。


だから、俺はハンカチを拾い、女の子に声をかけた。

「すいません、ハンカチ落としましたよ」

「え…あっ!ホントだー!」

ガサガサとカバンを漁って目を丸くし、「またやっちゃった…私、こういうこと多いなぁ…」と呟いて俺からハンカチを受け取る。

その際に揺れる綺麗な髪、くっきりとした丸い二重の目、小さい唇、真っ白な美しい肌…それは、

まるでーーーーーーーーーーーーーー冬華。

「君、名前はっ?」

気がついたら、名前を訪ねていた。普通に考えたらおかしいかもしれないけど、かってに口が動いていた。

「私…ですか?」

キョトンとしたように呟いたけど、一瞬で可愛らしい微笑みを見せてーーーーーーーー

「私は、高星 桃花です。お兄さんは?」

「俺は…東 叶翔」

タカホシ トウカ…。

冬華なのか…?

うーんと考えるような仕草をした彼女。

「うーん。アズマ カナトってどっかで」

「えっ」

ザアアッ。

一瞬強い風が吹いて2人の間をすり抜けるように桜の花が通り過ぎていった。

まるで、2人の再開を祝うかのように。







ーーーーー第1部ーーーーーENDーーーーー