ん、なにこれ。まただ…
チョコの時と同じ現象。心臓の鼓動が、やたら早くなって痛くなる。
「い、痛い」
「は?」
「瀧くんといる時いつもおこる現象なの。きっ、気にしないで…」
キューと、なる胸を右手で必死に押さえる。
「え、大丈夫ですか?一ノ瀬さん」
ぐっと近づく距離。
目の前にはかっこいい顔を隠してしまっている瀧くんの顔。←(余計)
え、かっこいい?
あたしかっこいいって思ってる?
「ああああたたた瀧くんっ、ち、近いです………」
「あ….すいません。だけど」
「ほ、本当に大丈夫!治った治った!ごめんね?心配かけて….い行こ!教室」
「はい」
心配そうに、見つめてくれるけど、、
それが余計に鼓動が加速させる。
朝から気分最悪。
「ギャハハハハっ、”男好き過ぎて別れてやった。”って坂村がお前と別れた理由言いふらしてるらしーぜ」
「らしーね」
ほんとなにこれ。
坂村くんってこんなに性悪だったの?
「まぁ皆分かってるでしょ、お前がそんな奴じゃないってこと」
和がポンッとあたしの頭を触る。
「はっっ!!え!!和もなにこんな事するの?!女子の胸キュン狙い?!」
「んだよそれちげーし。
1人にしかやらねーよ、そんな事」
「……what?」
どうゆう事だ?
「ふっ、さすが鈍感だわ花。和〜そうゆうのはハッキリ言わないとね〜?」
杏がニヤニヤしながらあたし達を見ている。
「花もフリーなわけだし、今度こそいい恋しないとね!意外に身近にいい男がいるのかもよ〜〜ん」
「杏うるせーよ」
「ん?別に和の事言ってるわけじゃないよ〜〜」
何だこの2人。
あたしそっちのけで、ギャーギャー騒いでやがる。
「新しい恋、か…」
チラリと隣を見る。
相変わらず瀧くんは本を読んでいる。
「瀧くん何読んでるの?」
「一ノ瀬さんには関係ないじゃないですか。難しいですよ絶対」
ガーーーーーンン
「酷い…」
「…そんなに凹まなくても」
いやいやあたしが聞きたい…
”関係ない”って言われただけで何でこんなにも凹むんだろう。
「瀧くんのバーカ。地味野郎」
「………」
無言で本を閉じる瀧くん。
やばい…怒らせた?
「あっ、違うのごめん瀧くん」
「何か気に触るような事言ってしまったなら謝ります。男好きの一ノ瀬さん」
そう言ってニヤリと笑い、教室を出て行く瀧くん。
な、なっ、
「何よーーーーッ!地味男め!!」
酷すぎる…
瀧くんと仲良くなるんじゃなかった。
あんな仕返しがくるとは!
「「………え?」」
前にいる杏と和が一緒のタイミングで振り返る。
「な、何か?」
「……瀧くんと花ってあんな仲よかったっけ?」
「え?普通じゃない?」
「全然普通じゃない。そもそも瀧くん話さないじゃん誰とも。初めて見たよ、あんなに話してる姿…」
「そぉ?瀧くん結構意外に話すよ!」
「へ、へぇ〜…こりゃまぁびっくり。ねぇ?和」
「あぁ、いくらフレンドリーな一ノ瀬でも瀧と仲良くなるとはな」
まぁ…そうだわな。
あんなに席替えで瀧くんと隣って知った瞬間嫌がってたんだから自分。
今考えたら酷すぎる…
瀧くん、いい人なのに。
そういえばどこ行っちゃったんだろう?
地味にあたしの一言で傷ついちゃったりして?!
「ちょっとトイレ!」
「え?花!」
あたしの足はどんどんと図書室へと動く。
瀧くんは絶対にここだ。
自分でも何をしてるんだか…
チャイムが鳴ったら隣の席に瀧くんは来るのに。
すぐに謝れるのに。
ーーーーガラッ
図書室の扉を開けるとやっぱり、
「いた…」
窓際の端の席で本を読んでいる。
窓から吹く風が瀧くんの綺麗な黒髪をふわりと動かす。
ハッキリと見える切れ長の目。
ーーードキ
その姿があまりにも綺麗でつい、見惚れてしまっていたーー。
「……一ノ瀬さん?」
「はっ、瀧くん何故目の前に?!」
「いや一ノ瀬さんこそ何故ここに?もう休み時間終わりますよ?」
…キューと胸が締め付けられる。
「怒ってないの?」
「何がです」
「さっきの教室での事…」
「気にしてわざわざここまで来たのですか?」
「…だ、だってあたし瀧くんに酷い事言った…ううん、席替えの時だってあたしっ…っ」
あれっ、涙が勝手に…
「だから言ってるじゃないですか、気にしてませんし、怒ってません」
「……本当?」
「はい。」
「ごめんね」
「別に一ノ瀬さんそんなに悪いことしてませんよ。そんなに謝らないで下さい。あと…一ノ瀬さんには感謝していますよ」
「え?」
「こんな僕に話しかけてくれるので。最初は1人でいる事が好きなのでうるさい人と隣になったな、と思いましたが」
うう、地味に酷い。
「僕も、謝ります。
男好きの一ノ瀬さんなんて酷い冗談言ってすみませんでした」
なんかあたし達謝ってばっかりだ。
「だからもう泣かないで下さい」
…っ
そう言ってぎこちなく、あたしの頭をポンと優しく撫でる。
胸が、張り裂けそう…
緊張とドキドキで瀧くんの顔が見れないーーー。
触られてる部分が熱くて、
「瀧くん、あたし….」
「はい」
ーーーーー好き…
言ってしまいそうになっていた。
え。
すすすすすすす好きーーーーー?!