「俺、帰るわ!」
居ても立っても居られず、部屋から出た。
「はぁ…好きなのになー…」
そんな事を思いながらボーっとカラオケ店の中を歩いていると、
どんっ
……いてぇ…ぶつかった…
「あっ、すいません」
スーツ姿の女が謝る。
「いえ、こちらこそすいませんでした……」
「可愛いからって調子乗んなよな。」
「ねー、同期にあんな子いるとか仕事しずらいわー、気強そうだし」
前から同じスーツ姿の女2人が話していた。
女ってこえー。
きっとさっき俺とぶつかった女の人の事を話しているんだろう。
女ってみんなこんな印象だからなのか、花がすごいピュアで、そんな悪口とか言わない子で…
どの女よりも良く見えるんだよーー。
好きだよ、花ーー。
多分俺、お前意外の人好きになれる自信がない。
「はぁー…、孤独死しそう」
全部全部、あの時の約束を破った
花のせいにしよう。
ーー壮介sideおわりーー
○
*
・
あっという間に季節は文化祭の季節に入った。
「はーい!
皆んな、出し物何にするか考えろー!」
馬鹿でかい声で生徒に言う担任の丸山先生こと丸ちゃん。
「はいはいはーい!
俺お化け屋敷がいいと思いまーす!」
「は!ちょっと和何言ってんの?お化け屋敷だけは止めようよ!」
後ろから和の背中を叩く。
「ってぇー!
なんでだよ、せっかく一ノ瀬のだ〜い好きなお化け屋敷にしようと思ってたのによー!」
「あたしがお化け嫌いな事くらい知ってるだろ、バカ!ブス!」
「おい!ブスはねーだろ、ブスは!」
「ぷ、」
ーーえ?
珍しく、悠人くんが笑ってる。
「ははは、久しぶりに見ました。花と和くんのそういう言い合い」
「和が花にフラれてからはめったに見れなくなったもんねー」と杏。
「おい杏、心えぐれるような事すんなり言うなよ………」
「あはははっ、ごめんごめん」
確かに、前ほど言い合う事はなくなったなー。
「なんか懐かしいね、和」
「ババアかよ」
「はーーーぁ?なんですって?!もう一回言ってみろ、ブス」
なーんて、ずっと言い合いしてたら、
「お前らうるさいぞー!
うちのクラスの出し物はお化け屋敷に決まったからなー!」
「……へ?ななななんでですか?!丸ちゃんんんん〜…」
怖いのもあるけど、お化け屋敷って1番準備面倒さそうだし…
片付けもダルそうだし…
「うちらのクラス、休憩所でよかったじゃないですかー!丸ちゃん!!」
「一ノ瀬お前は何を考えてるんだ…。
お化け屋敷以外に意見が出なかったから、お化け屋敷に決まったんだ。
サボるんじゃないぞ、一ノ瀬」
「そ、そんなぁ………あたしは本気の本気で休憩所がよかったのにー。イスだけ置いてさ……。皆んな歩いて疲れるし、食べ物食べれるスペース欲しいと思わない?!」
……なんだか最後ブルゾンち○み風になってしまった。
「やっぱ花最高、はははっ」
悠人くんが肩を震わせて笑う。
「ちょ、ちょっと…悠人くんそんなに笑わなくてもいいじゃん」
「ごめん、僕相当、花のことツボなのかもしれない」
……なによ。
嬉しくなんかないもんね。
「嬉しいくせに、顔ニヤけてんぞ」
杏にそう言われ、一瞬で真顔に切り替えた。
その日の帰り、あたしは悠人くんと一緒に帰っています。
「花の発想笑える。
休憩所って……っ、いくらなんでもそれはヒドイ…ははは」
まーだ、ツボってやがる。
「そんなにツボ?
そんなに笑われるとだんだんムカついてくるんですけどー?」
「はー、ごめんなさい。花はいつも予想を遥かに超えるので」
ムカつくっていうより、可愛すぎてムカつく。
「悠人くん、今日うち来る?」
「え?」
「あ、や…お母さんも喜ぶと思うし、見たい映画があってさ、一緒に見ない?どうかな?」
嘘。
もうすぐうちん家に着くこと分かってて、まだ一緒にいたくて誘った。
「じゃあ、お邪魔します」
「うん。どうぞ」
「花、お母さんいないじゃん」
「あ、うん…
た、多分買い物に行ってるのかも!」
「そう」
「先部屋入ってて、あたし飲み物とかお菓子とか準備するからさ」
「うん」
悠人くんはそう言ってあたしの部屋に向かった。
………落ち着け落ち着け花。
お母さんいないって事は、あたしと悠人くんの2人っきりって事?!
どうしよう、
急に速くなる鼓動を抑えるため、胸に手を当てる。
変に緊張するな……
準備していたものを持ち、部屋に入ると悠人君は何やらアルバムをあさって見ていた。
「わっ、なに見てるの?!」
「小さい頃の花の隣には常に壮介くんがいるんだね」
吐き捨てる様に言う。
「なに、嫉妬?」
「少しね、でも可愛い」
「あああありがとう……」
めっちゃ噛んじゃったし。
付き合ってまぁまぁ経つのに、未だに照れてしまう。
「あ、花見たいDVDって何?」
あー!そうだった!
あたしは、引き出しからまだ見れてなかったDVDを取り出す。
「これなんだけど…
恋愛モノだから悠人くん興味……ないよね…?」
レンタルされたばっかりで、映画館では見そびれてたやつ。
がっつりの恋愛モノ。
「うん…でも花が見たいのなら、見たいかな」
「えっ、いいの?」
「せっかく来たんだし。付き合うよ」
「ありがとう!!
じゃあ、ちょっと待っててね!」
…よかった。
てっきり、『なにそれ、興味ない。花1人で見ればいいじゃん』的な事言われるかと思ってたから。
○
*
・
「………」
「………」