「俺、帰るわ!」



居ても立っても居られず、部屋から出た。






「はぁ…好きなのになー…」




そんな事を思いながらボーっとカラオケ店の中を歩いていると、




どんっ





……いてぇ…ぶつかった…



「あっ、すいません」




スーツ姿の女が謝る。



「いえ、こちらこそすいませんでした……」








「可愛いからって調子乗んなよな。」


「ねー、同期にあんな子いるとか仕事しずらいわー、気強そうだし」




前から同じスーツ姿の女2人が話していた。



女ってこえー。


きっとさっき俺とぶつかった女の人の事を話しているんだろう。




女ってみんなこんな印象だからなのか、花がすごいピュアで、そんな悪口とか言わない子で…

どの女よりも良く見えるんだよーー。













好きだよ、花ーー。



多分俺、お前意外の人好きになれる自信がない。




「はぁー…、孤独死しそう」





全部全部、あの時の約束を破った



花のせいにしよう。










ーー壮介sideおわりーー
















あっという間に季節は文化祭の季節に入った。



「はーい!

皆んな、出し物何にするか考えろー!」




馬鹿でかい声で生徒に言う担任の丸山先生こと丸ちゃん。



「はいはいはーい!
俺お化け屋敷がいいと思いまーす!」


「は!ちょっと和何言ってんの?お化け屋敷だけは止めようよ!」




後ろから和の背中を叩く。




「ってぇー!

なんでだよ、せっかく一ノ瀬のだ〜い好きなお化け屋敷にしようと思ってたのによー!」


「あたしがお化け嫌いな事くらい知ってるだろ、バカ!ブス!」


「おい!ブスはねーだろ、ブスは!」


「ぷ、」



ーーえ?


珍しく、悠人くんが笑ってる。




「ははは、久しぶりに見ました。花と和くんのそういう言い合い」


「和が花にフラれてからはめったに見れなくなったもんねー」と杏。



「おい杏、心えぐれるような事すんなり言うなよ………」


「あはははっ、ごめんごめん」




確かに、前ほど言い合う事はなくなったなー。




「なんか懐かしいね、和」


「ババアかよ」


「はーーーぁ?なんですって?!もう一回言ってみろ、ブス」





なーんて、ずっと言い合いしてたら、




「お前らうるさいぞー!

うちのクラスの出し物はお化け屋敷に決まったからなー!」


「……へ?ななななんでですか?!丸ちゃんんんん〜…」










怖いのもあるけど、お化け屋敷って1番準備面倒さそうだし…

片付けもダルそうだし…




「うちらのクラス、休憩所でよかったじゃないですかー!丸ちゃん!!」


「一ノ瀬お前は何を考えてるんだ…。

お化け屋敷以外に意見が出なかったから、お化け屋敷に決まったんだ。

サボるんじゃないぞ、一ノ瀬」


「そ、そんなぁ………あたしは本気の本気で休憩所がよかったのにー。イスだけ置いてさ……。皆んな歩いて疲れるし、食べ物食べれるスペース欲しいと思わない?!」



……なんだか最後ブルゾンち○み風になってしまった。





「やっぱ花最高、はははっ」




悠人くんが肩を震わせて笑う。



「ちょ、ちょっと…悠人くんそんなに笑わなくてもいいじゃん」


「ごめん、僕相当、花のことツボなのかもしれない」




……なによ。



嬉しくなんかないもんね。





「嬉しいくせに、顔ニヤけてんぞ」



杏にそう言われ、一瞬で真顔に切り替えた。














その日の帰り、あたしは悠人くんと一緒に帰っています。




「花の発想笑える。

休憩所って……っ、いくらなんでもそれはヒドイ…ははは」




まーだ、ツボってやがる。




「そんなにツボ?

そんなに笑われるとだんだんムカついてくるんですけどー?」


「はー、ごめんなさい。花はいつも予想を遥かに超えるので」




ムカつくっていうより、可愛すぎてムカつく。



「悠人くん、今日うち来る?」


「え?」


「あ、や…お母さんも喜ぶと思うし、見たい映画があってさ、一緒に見ない?どうかな?」



嘘。

もうすぐうちん家に着くこと分かってて、まだ一緒にいたくて誘った。




「じゃあ、お邪魔します」


「うん。どうぞ」












「花、お母さんいないじゃん」


「あ、うん…
た、多分買い物に行ってるのかも!」


「そう」


「先部屋入ってて、あたし飲み物とかお菓子とか準備するからさ」


「うん」



悠人くんはそう言ってあたしの部屋に向かった。



………落ち着け落ち着け花。


お母さんいないって事は、あたしと悠人くんの2人っきりって事?!



どうしよう、




急に速くなる鼓動を抑えるため、胸に手を当てる。


変に緊張するな……











準備していたものを持ち、部屋に入ると悠人君は何やらアルバムをあさって見ていた。




「わっ、なに見てるの?!」


「小さい頃の花の隣には常に壮介くんがいるんだね」



吐き捨てる様に言う。



「なに、嫉妬?」


「少しね、でも可愛い」


「あああありがとう……」




めっちゃ噛んじゃったし。

付き合ってまぁまぁ経つのに、未だに照れてしまう。




「あ、花見たいDVDって何?」



あー!そうだった!



あたしは、引き出しからまだ見れてなかったDVDを取り出す。




「これなんだけど…

恋愛モノだから悠人くん興味……ないよね…?」




レンタルされたばっかりで、映画館では見そびれてたやつ。


がっつりの恋愛モノ。













「うん…でも花が見たいのなら、見たいかな」


「えっ、いいの?」


「せっかく来たんだし。付き合うよ」


「ありがとう!!
じゃあ、ちょっと待っててね!」




…よかった。

てっきり、『なにそれ、興味ない。花1人で見ればいいじゃん』的な事言われるかと思ってたから。


















「………」


「………」