しばらく歩くと



「………あ、塩の香…」


「フッ、分かった?」





そう言われ見てみると、とても大きくて綺麗な海が広がっていた。




「わぁ…綺麗…あたし海に来たの久しぶりだよ。」


「ここです、連れてきたかった場所」


「悠人くん、夜景と海といい…意外にロマンチストなんだね」


「……ただ、好きなだけですよ」




ふふ、顔が赤くなってる。




「花、座って。…あと、さすがに10月だから入れませんよ?」


「それくらい分かってるよ!」



あたしはそう言って、海へ降りる階段に腰をかけた。













「はい、これ」



同じく横に座る悠人くんがあたしにそっと差し出したのは、大好きなチョコレート。




「これって…コンビニの…」




公園で貰い、遊園地でも貰った。



「束縛男に悩まされてたのを思い出しますね。ふっ…」



そうだ。あたしはあの時コンビニで束縛男には注意という雑誌の内容を読んでいる時に悠人くんに鉢合わせた。


…束縛男=坂村くん。

と付き合っていた頃だ。



なぜか、その時の事を思い出したのか、くくく と笑っている悠人くん。




「ちょっと、笑いすぎじゃない?!」


「や、坂村くんとほんと何で付き合ってたんですか?笑える」


「ひ、ひどい…っ、あたしだって馬鹿だと思ったよ!だけどそこまで笑わなくてもいいでしょ…」


「ごめんごめん」




あたしはチョコを食べた。










やっぱり美味しい。



「でもあの時、悠人くんが図書室で言ってくれたおかげでもある」


「だって花が馬鹿すぎて」


「馬鹿すぎはないでしょ!馬鹿すぎって………もういい。このチョコ返す」




たくさん貰ったチョコを悠人くんに全部返してやった。


あたしの黒歴史をイジるなんて…っ。




「怒らないでください。……あの、これ…あげるので」


「え…っ」



そう前に差し出されたのはチョコレートではなく、キラキラと輝いているネックレスだった。



小さめのシンプルなネックレス。




「31日、花の誕生日」


「あ…っ」



そうだ。10月31日はあたしの誕生日。


でも、



「明日だよ?」


「…はぁ、平日の学校のある日にこんな事出来ないでしょ。」




あ、そっか…だから悠人くんは1日早く、ゆっくり過ごせる日曜日に…




「ありがとう…。本当にありがとう、悠人くん。大切にするね」


「はい」


「ねぇ、つけてよ」


「じゃあ貸して?」




あたしはつけてもらう為に悠人くんに背を向ける。




「あと髪上げて下さい」




悠人くんの声、目の前にまわってくる手。全てが近くて、息をするのを忘れてしまうくらいドキドキしたーー。



















「おい花、それ何?」
と、あたしの首元のネックレスを指差す。



朝っぱらから壮ちゃんはうるさいなー。


あたしは昨日のデートの余韻で浸ってるっていうのに。



「貰ったの!昨日悠人くんにっ♫あたし、今日誕生日だから早めにね。

…あ!壮ちゃんもあたしにプレゼントあったらもれなく貰うんで」



そう、今日あたしの誕生日。




「なんだよ、もれなくって…」


「へへへへ〜」



キラキラ首元で光るネックレスを見つめる。

あぁ…幸せ。






「……はぁ、
やっぱ俺花の事好きだわ……」


「「え」」



見事に前の席にいた和とあたしの声がハモった。




「……え?」



遅れて、悠人くんも。←(いつの間にか隣の席にいた)











壮ちゃんがいきなりそんな事を言うもんだから、3人の目が点になる。




「全然、俺の事好きになってくれないのになー。やっぱ諦められねーなー」


「そそそそ壮ちゃん、何イッテルノカナ??もうその話しは、さ…」


「俺のが花の事知ってるし」



壮ちゃんは目の前の悠人くんにそう言ってどこかへ行ってしまったーー。



…え、っと…




「えー、まとめると、お前ってモテるんだな。俺も好きだったし」



ははは、と笑う和。



隣の悠人くんはというと、なんとも無な表情をしている。



「おいおい、瀧、大丈夫だって。俺もう花の事これっぽっちも好きじゃねーぞ?安心しろ!!」


「……和くんじゃなくて、壮介くんに僕は腹が立っていますね」


「あっ、だよな…ははは…トイレ行こーっと」




瀧くんのなんとも言えない空気に耐えられなくなったのか、和がこの場から逃げる。















「花」


「な、なに…?」




また怒られるかな?と覚悟をしていた。




「お誕生日おめでとうございます」


「へ?」



てっきり壮ちゃんの事で言われるかと思ったから変な声が出てしまった。




「怒らないの?」


「はい、腹たちますよ。
けど幼なじみですし…まぁ、なにより」



すると悠人くんがあたしの耳元まで口元を寄せた。




「花が、僕の事すっごい好きなの知ってるからーー。」





き、きゃーーーーー!!!




声には出さないが、心の中で思いっきり叫ぶ。



「あたし、死にそう」


「何でです」










いい事思い出した。

あたしも悠人くんにやり返ししよう!




あたしは悠人くんの左肩に両手を添えて、悠人くんの耳元に口元を寄せたーー。




「悠人くんが、好きすぎて死にそう」


「ちょ……っ」



勢いよくあたしから離れた。




「へへへ、仕返し」


「ここ教室ですし、しかもなにその仕返し…花のくせに」


「なによ!花のくせにって!ほんっとひどいなー、悠人くん」



バシッと背中を叩く。



ちょっとは、ドキドキしてくれたのかなー、って思ったのになぁ。









ーー杏sideーー





……なにこれ。



あたし今これ何を見せつけられてんの。




「もうっ、やっぱりあたしばっかドキドキしてるんじゃないのー?」


「はいはい、もういいですから。先生来ますよ?」




さっきからラブラブトークしてますけども…2人はあたしの存在に気づいてないのかね?



面白いからいいんだけどね。




花は何やら瀧くんをドキドキさせたいようだけど、あたしから見ると瀧くんは十分花に心臓やられてると思うけどね。



目キョロキョロしすぎだし、

耳真っ赤。











なんとも分かりやすい。

花は鈍感な所があるから気づいてないんだろうな。




「瀧くーん、耳赤いよ?」



少し意地悪をしてみる。




「は…っ、杏さん何言ってるんですか、赤くないですよ別に」



ふっ、めっちゃ動揺してるし。




「えっ、悠人くんそうなの?!どれどれどれどれ??」


「花は座ってていいから」



瀧くんが雑に花の頭を押さえる。


にしても花はやっぱりうるさい(笑)