「付き合ってから好きになる可能性だってあるじゃん!こんなあたしが告白されるなんて奇跡でしかないんだよ!
いつも教室では暗くて地味な瀧くんに色々言われる筋合いなんてない!」
あ…待って…
今のはさすがに、
「ごめっ「いいですよ。」
「え?」
「どうせ僕は暗くて地味なんです。僕と関わると変な目で見られます」
「や、違うの…」
「今日英語の時間だって、僕と話したからって周囲の目気にして」
うそ、バレてたーーーーーー。
「た、きくん…」
「今更謝らないで下さい。本当のことなんで。あとあまり気にしてないです」
「瀧くん…」
「では、盗み聞きと、生意気な事言ってすみませんでした」
床が、冷たい。
ペタン、と座り込んだ。
瀧くんの言っている事は全て正しくて、なのにあたしは…
本当に謝らなければいけないのは、どっちだったーーーー?
「じゃあまた帰りね、一ノ瀬さん」
「うん、またね!」
ヒラヒラと坂村くんに手を振る。
そう、彼氏の坂村くん。
一緒に登校してきました。
”一ノ瀬さんも一ノ瀬さんです。告白されて浮かれてすぐOKするなんて。”ーー。
「あああぁぁあぁーーっ!!!!」
思い出すな!!!消えろ!!
昨日の瀧くんなんて思い出すなー!!
いいんだ、これで。
だってずーっと杏から彼氏の惚気を聞きまくってたあたしにやっと彼氏ができたんだよ?
この状況を楽しめばいいんだ!
「ふふふふふふ」
あたしにもついに…彼氏。
ガラッ
いつもとは違う。
張り切って教室のドアを開けると、
「ちょっとーーー!花ーーー!!どーゆー事か説明してもらえます?」
開けるとすぐ杏が飛びついてきた。
「ふふふ、杏さん、あたしにもとうとう春がやってまいりました」
「そーゆーのいいから。(バッサリ)
で!!何で坂村と付き合うことになったわけ?!あんた話した事ないって言ってたのに、いきなり一緒に登校するもんだからビックリしたじゃん」
「うん…ハッキリ言いますね…」
「うん」
「あたし告白されたの初めてでつい好きって言って貰えて嬉しくて…その付き合ってから好きになればいっか!となり…付き合いました ♫」
「♫←じゃねーよ!」
あたし達の会話に入ってきたのは和。
「和おはよー」
「おはよー。じゃねーよ、お前そんな簡単に付き合っていいわけ?」
「簡単って…坂村くんも付き合ってから徐々に好きになってもらえればいいって言ってくれたもん」
「………あっそ」
え、なにあれ。なにあの和の態度。
「ねぇ杏、和どうしちゃったの」
「さぁね。ショックだったんじゃない?花に彼氏ができて」
「え!!!」
「ほら和は中学から一緒でしょ?花とは。だから親みたいな変な感情になったんじゃない?大事な娘が他の男に持ってかれた。みたいな」
「なにそれ(笑)」
また2人でギャハハと騒ぐ。
「和もそろそろ本気で花に行かないとねー、花鈍感だから」
「ん?杏なんて?」
「なーにも」
ガコンッ
「……」
「…ぁ」
瀧くん。
昨日の事があって、少し気まずい。
「あの、瀧くん…」
あと、あたしはきちんと瀧くんに謝らなければいけない。
いくらなんでも瀧くんに対してあの発言は最低だった。
「昨日はごめんなさい」
「……だから別に気にしてません」
「だけどいくらなんでも無神経過ぎました。あたしだったら傷つくもん」
「僕は傷つきません」
「……でも」
「別にいいです。言われ慣れているので………もういいですか?読書に集中できないので」
「…ぁ、ごめん」
慣れてるって…
やっぱり分からない
普通そう思わないでしょ。
「花って瀧悠人とそんな話すっけ?」
昼休み、杏がお弁当を食べながらそんなことを言う。
「そんなってほど話してないじゃん」
「でもさ、前まで全く話してなかったじゃん。明らか避けてたし」
「ま、まぁ隣の席だからね」
「うーーん、ま、そっか。瀧くんも普通に喋るんだねー」
そんな会話をしながら、ボーッと運動場を窓から眺める。
そこには
「あ…」
坂村くんが同じクラスの男子とお弁当を外で食べているのが見えた。
「花、彼氏いんじゃん。彼女っぽくさ窓から手とか振らないでいーの?」
ニヤニヤと笑う杏。
「なによ、朝は少し付き合ってる事に反対だったくせに」
「んー、まぁね。でも付き合ってからの恋もあるのかな〜ってあたしも思ったんだよ、さっきの授業中にね」
「ハハッ、なんだそれ」
坂村くんは3人でワイワイと何やら楽しそうにしている。
少し茶色い髪が真昼の太陽に当たってすごく明るく見えた。
あたしの…彼氏。
あたしはこの人をちゃんと好きになれるのかなーーー?
「一ノ瀬さん、呼んでますよ」
「え?」
放課後、隣の席の瀧くんが教えてくれた。
坂村くんがあたしを迎えに教室に来ている姿を。
「ありがと」
「…いいえ」
瀧くんは話せば普通にいい人なのかもしれない。
あたしは急いで坂村くんとところに向かった。
「お待たせ!」
「うん、行こうか」
ふわっと優しい笑みを浮かべる。
「うんっ」
ふふ、やっぱいいじゃん。
好きになれそうだよ、坂村くんのこと!
「今日はもっと一ノ瀬さんの事知りたくてさ…いっぱい質問してもいい?」
「どどどどーぞ!!」
あ、やべ。めっちゃ噛んだ。
「ハハッ、そんな緊張しなくていいのに」
緊張…?
しているのかな、あたし。
「だから、放課後デートしながらでもいーい?」
放課後デート
放課後デート
放課後デート
なにこのいい響き……
「ずっとしたかったんだ…放課後デート」
「ほんと?そう言ってくれて嬉しいな」
優しいし、問題ない。
「あたしも、頑張って坂村くんの事好きになってみせるね」
「ちょっハハッ、なにそれ。頑張って好きになるもんじゃないよ、頑張らなくていいだよ。…いつの間にか好きになってて、俺のこと」
「……」
「あっ…ごめん、なんかクサすぎた」
「ハハッ、ほんとだよ〜」
おかしいな。
普通ここで、キュンてするはずだよね?女子ってだいたい。
え…あたし女子じゃない?!
いや、それはない。
あっ、それはまだ坂村くんの事が好きじゃないからか!
いやまてよ、でもドラマとか見ててあたしめちゃめちゃキュンキュンするよ?