優しくあたしの背中をさすってくれる壮ちゃん。

そのおかげで少し落ち着いた。




「花、大丈夫か?」


「う、うん…ありがとうね」


「……」


「もう大丈夫」


「花…どうせ原因は瀧だろ?」




そう真っ直ぐあたしの目を見て言う。


けど、あたしは何も言えなくて…ずっと黙ったまま、壮ちゃんの瞳を見ていた。


なぜか、反らせなかった。




「花……俺にしなよ…」




そして、顔が少しずつ近づいてくる。









「だめ……、壮ちゃん」



顔を反らす。














「……俺だったら、こんな泣かせないのにな。……ほら、帰るぞ」



「……うん」





その日はそのまま壮ちゃんと一緒に帰った。





こんなに好きなのに。

信じてるはずなのに。





不安になってしまうーー。









それからあっという間に1週間が経ち、修学旅行の日となった。


あれから、悠人くんとは挨拶くらいは交わすけど会話はしてない。


あたしが避けてるのかも。

気まずすぎてどうしていいのか分からない。


このままでいいのかな?


と考えてる日々が続いて、今日がきた。



只今飛行機の中。

台湾に向かっております。



「花、ちゃんと瀧くんと話さないと。
こんなの花の一方的で、瀧くんも何て声かけたらいいか分かんないんだと思うよ?」



ちなみに飛行機の席は杏と隣。

後ろに悠人くんと和が座っている。



「分かってるんだけど…怖いんだよね。あんな言い方しちゃったし…」


「ホテルできっかけ作ってあげようか?」



杏がノリノリでそんな提案を出すが、ホテルでなんて先生にバレた事を考えると恐ろしい。




「ごめん、あたしちょっとトイレ」




狭い通路を歩きトイレと向かう。












もうなに…誰か入ってるし。

戻るのもダルいし、出てくるまで待っていた。


しばらくして、ガチャ と鍵が空く音がし、中から人が出てきた。




「あれ、一ノ瀬さん」


「……伊藤さん」




1番会いたくない人がいた。




「ごめん、待ったよね、どうぞ」


「…うん」




すれ違いで入ろうとした時だったーー、




「このままだったら私、本気で瀧くん貰いに行きますよ?」





ーーーえ。



耳元で早口で言ってきたが、ハッキリと聞き取れた。



いい返そうとしたけどもうそのには伊藤さんはいなかった。




「…ほ、ほらぁ」



やっぱり。

女の勘は当たるものだ。




伊藤さんやっぱり悠人くんの事が好きだった。




はぁ…

あたしだって男友達結構いるし、悠人くんの珍しい女友達くらいどうってことない。って考えるようにもしたけど…


気があるってなると話しは違う。



ここで、あの時の坂村くんの気持ちが少し分かったよ……。















ーー杏sideーー



花がお手洗いに行っている間に、あたしは後ろにいる瀧くんに聞いてみた。





「何であんた達微妙なの今」


「別にケンカなどしてませんけど…ただ、一ノ瀬さんが避けてくるので….話せないんですよ」




いわゆる花の一方的進行なわけか。



…全く。





「きっと一ノ瀬さんは僕に怒鳴った事もあってか気まずいのだと思います。

まぁ、一ノ瀬さんが怒鳴る意味も分かりませんけど。自分だって同じような事してるので」




あぁ、例の幼なじみの壮介くんか。


お互いが嫉妬してるけど、瀧くんは何も言わず我慢してて花は爆発した感じね。












「ちっせーな、お前ら。
んなの普通に話し合えば解決するんじゃねーの?」




寝ていたと思った和が口を開いた。




「んー….、
そうですね…なんとかします。」


「ほんとに頼むよ〜。
これじゃあせっかくの修学旅行楽しめないんですけどー。」





お互い不器用すぎる。


花も花だ。

自分ばっかりすぐカーッとなってしまうところがいけない。



真っ直ぐで素直なところがいいんだけど、たまにそれが悪く出る。



すると、花が戻って来たかと思ったら…




「は!!!」




すっげー号泣してる…え、なになになにお手洗いの間に何があったんだ。






「……杏、うっ…あたし….宣戦布告されちまったよ…」










ーー杏sideおわりーー










席につくやすぐ杏に相談した。




「はぁ…あんたね、それで瀧くんが伊藤さんとこに行くとでも思ってんの?」




後ろの2人に気づかれないよう小声で話す。




「だって…不安なんだもん」


「ちゃんと瀧くんを信じなよ。
あんただって、同じ思い瀧くんにさせてるかもしれないんだよ?」


「壮….ちゃんのこと?」




そう聞くとコクリと頷く杏。





「……ちゃんと、夜に悠人くんと話してくる。」




逃げてちゃダメだ。













無事、あれから台湾に着き、1日目はクラス皆んなで観光をした。




「ねねねね!見てみて、杏!ここってさあの千と千尋の神隠しんとこじゃん」


「九份ね」




ひたすら楽しみ、シャッターを切りまくる。



夜の九份はとても幻想的で本当に物語の世界に入ってしまっているようだ。





「一ノ瀬さん」




すると突然後ろから悠人くんに声をかけられた。




「な、なに?」


「…今日の夜、会わない?」


「え、どうやって」


「まぁ、それは後ほどです。では」




それだけ言って、和とどこかへ行ってしまった。←(和といつの間にか仲良くなってる)





び、びっくりした…


けどほんとどうやって会うの?













その夜、

ホテルに着き、消灯まで皆んなそれぞれの時間を過ごしていた。




「杏、あたし喉乾いたからロビーの自販機で飲み物買ってくるけど杏いる?」


「あ、じゃあコーラ」


「はいよー」




携帯と財布を持ってロビーへと向かう。


にしても…悠人くんからの連絡は一切なし。

夜会おうって言ったのに…もう思いっきり夜ですけど!!!




そしてロビーに着くと…







ーーーーーえ、