「ありがとう!これからその、よろしくね、一ノ瀬さん」
「こちらこそ…あの、よろしくお願いします。です。」
「じゃあ…早速一緒に帰る?」
え、待ってそれは無理!
いきなりはちょっと心臓に悪いというか……
「あたし、ちょっと図書室用があって少し残りたいんだ。だからまた明日でもいいかな?」
「図書室に用があるの?」
やっっべーーー。
完全に怪しまれてる?!
「お兄ちゃんに借りてきて欲しい本があるって言われたの今思い出してさ!それ借りようかと思ってね!」
「でも今放課後だから借りれなくない?」
どどどどうしよう……。
「また今度借りる!けど、次来た時すぐ借りれるように今探しとくからまた明日!!坂村くん!」
「?分かった。気をつけね」
「うんっ、ありがとう」
坂村くんが出て行ってシンとなる図書室。
「はぁー…」
あたしのため息が響く。
後悔、してない?よね。
大丈夫、坂村くんはきっといい人。
「あんたって本当にバカですよね
嘘つくの下手すぎます」
え。
誰、ここにはあたししかいないはず。
「ごめんなさい。盗み聞きするつもりはなかったんですけど」
たたたた瀧くん?!?!!
隅っこの本棚からゆっくりと現れた瀧くん。
ってことは…
「全部聞いてた?」
「はい」
まーーぢーーーかーーー。
「一ノ瀬さんはバカ過ぎます」
「は?」
こいつ、瀧くんのくせにバカって言った?!
「なんでよ!!別にいいでしょ。瀧くんには関係ない」
「でも…聞いてしまったので。」
「…盗み聞きなんて最低」
「……最低かもしれませんが、一ノ瀬さんも一ノ瀬さんです。告白されて浮かれてすぐOKするなんて。
しかも、友達からで、って言われてましたよね?なのに最終的には付き合ってからでいいから好きになって。って言われてました。強引すぎでは?」
どんどんあたしとの距離をつめてくる瀧くん。
あれ、瀧くんってこんな性格だったの?
「しかもここ、僕の唯一の居場所なんです。邪魔しないでもらえますか?」
メガネから見える切れ長の目があたしを睨む。
「なによ…」
「付き合ってから好きになる可能性だってあるじゃん!こんなあたしが告白されるなんて奇跡でしかないんだよ!
いつも教室では暗くて地味な瀧くんに色々言われる筋合いなんてない!」
あ…待って…
今のはさすがに、
「ごめっ「いいですよ。」
「え?」
「どうせ僕は暗くて地味なんです。僕と関わると変な目で見られます」
「や、違うの…」
「今日英語の時間だって、僕と話したからって周囲の目気にして」
うそ、バレてたーーーーーー。
「た、きくん…」
「今更謝らないで下さい。本当のことなんで。あとあまり気にしてないです」
「瀧くん…」
「では、盗み聞きと、生意気な事言ってすみませんでした」
床が、冷たい。
ペタン、と座り込んだ。
瀧くんの言っている事は全て正しくて、なのにあたしは…
本当に謝らなければいけないのは、どっちだったーーーー?
「じゃあまた帰りね、一ノ瀬さん」
「うん、またね!」
ヒラヒラと坂村くんに手を振る。
そう、彼氏の坂村くん。
一緒に登校してきました。
”一ノ瀬さんも一ノ瀬さんです。告白されて浮かれてすぐOKするなんて。”ーー。
「あああぁぁあぁーーっ!!!!」
思い出すな!!!消えろ!!
昨日の瀧くんなんて思い出すなー!!
いいんだ、これで。
だってずーっと杏から彼氏の惚気を聞きまくってたあたしにやっと彼氏ができたんだよ?
この状況を楽しめばいいんだ!
「ふふふふふふ」
あたしにもついに…彼氏。
ガラッ
いつもとは違う。
張り切って教室のドアを開けると、
「ちょっとーーー!花ーーー!!どーゆー事か説明してもらえます?」
開けるとすぐ杏が飛びついてきた。
「ふふふ、杏さん、あたしにもとうとう春がやってまいりました」
「そーゆーのいいから。(バッサリ)
で!!何で坂村と付き合うことになったわけ?!あんた話した事ないって言ってたのに、いきなり一緒に登校するもんだからビックリしたじゃん」
「うん…ハッキリ言いますね…」
「うん」
「あたし告白されたの初めてでつい好きって言って貰えて嬉しくて…その付き合ってから好きになればいっか!となり…付き合いました ♫」
「♫←じゃねーよ!」
あたし達の会話に入ってきたのは和。
「和おはよー」
「おはよー。じゃねーよ、お前そんな簡単に付き合っていいわけ?」
「簡単って…坂村くんも付き合ってから徐々に好きになってもらえればいいって言ってくれたもん」
「………あっそ」
え、なにあれ。なにあの和の態度。
「ねぇ杏、和どうしちゃったの」
「さぁね。ショックだったんじゃない?花に彼氏ができて」
「え!!!」
「ほら和は中学から一緒でしょ?花とは。だから親みたいな変な感情になったんじゃない?大事な娘が他の男に持ってかれた。みたいな」
「なにそれ(笑)」
また2人でギャハハと騒ぐ。
「和もそろそろ本気で花に行かないとねー、花鈍感だから」
「ん?杏なんて?」
「なーにも」
ガコンッ
「……」
「…ぁ」
瀧くん。
昨日の事があって、少し気まずい。
「あの、瀧くん…」
あと、あたしはきちんと瀧くんに謝らなければいけない。
いくらなんでも瀧くんに対してあの発言は最低だった。
「昨日はごめんなさい」
「……だから別に気にしてません」
「だけどいくらなんでも無神経過ぎました。あたしだったら傷つくもん」
「僕は傷つきません」
「……でも」
「別にいいです。言われ慣れているので………もういいですか?読書に集中できないので」
「…ぁ、ごめん」
慣れてるって…
やっぱり分からない
普通そう思わないでしょ。