どんどん溢れてくる涙を優しく指で拭ってくれる瀧くん。
「こんなに嬉しい事っ…初めて…っ」
「……あまり可愛い事言うと知りませんよ?」
そう言ってあたしを優しく抱きしめる瀧くん。
「えっ、えっ、」
あたし、いま瀧くんの腕の中…
瀧くんの匂い
瀧くんの暖かさ…
こんなに感じられるなんて。
「好き….瀧くん、大好き」
「…僕もです」
抱きしめる腕の強さがさらに強くなる。
このまま…このまま離れたくない。
両想いって、
こんなに幸せなんだーー。
そして次の日、いつものように席に座ろうとする。
「おはようございます」
瀧くんから挨拶してきた。
「おはようっ」
もう、あたしの彼氏なんだぁ。
ニヤニヤしながら隣の席の彼を見る。
「そんなニヤニヤして…気持ち悪いですよ、一ノ瀬さん」
「なっ…」
彼女に対して気持ち悪いはなくない?!
しかも、もうちょっと甘々になるのかなーとか思ってたらそんな変化ないし…
「あたし達本当に付き合ったのかーーーーーーー?!?!?」
この不満を杏にぶつける。
「まぁ、瀧くんが急に変わったら逆にビビるけどね(笑) でもなんだかんだでくっついてよかったわ!」
「そうなのかな…」
「でもちゃんと好きって言ってくれたんでしょう?大丈夫だって」
「だって…」
あまりにも、連絡もないし、朝は家近いのに別々だったし…
「大丈夫、瀧くん相当 花の事好きだと思うよ、ああ見えて」
「え!何で!何で分かるの?!」
「ん〜?遊園地の時に、和と花が仲良さそうなの見てて嫉妬してたよ。眉間にシワ寄せちゃってさ」
「あれはまぢレア」と言って瀧くんの表情を真似する杏。
なにそれ…
なんかそれ聞いたらさっきまでの不安がどっか行ってしまったよ…
…単純だな、自分。
あたしは昼休み、きっと瀧くん図書室にいるだろうと思い向かった。
「瀧くん、ご飯一緒に食べよう?
その様子じゃまだ食べてないよね?」
まだ開いてないお弁当。
「…いいですよ、一ノ瀬さんは杏さんと食べて下さい。僕と食べてると色々言われますよ?」
そう言って本を読み始める瀧くん。
なにそれ…
「バカじゃないの?
あたしは瀧くんといたいの!
一緒に食べたいの!
周りなんか関係ないよ…」
「…じゃあ、上に行きましょう」
「う、上?」
そこは…
「あたし屋上なんて初めてきた…」
「僕もです」
「そうなの?
じゃあ何で屋上なの?」
「誰もいないし、人の目もない。
あと…一ノ瀬さんと2人きりになれる」
「……は、恥ずかしい、です…」
瀧くんは ふいに サラッと恥ずかしい事をいつも言うからだめだ。
「ねぇ一ノ瀬さん」
「何?」
「こっちおいで」
座ってると、そう言って両手を広げてこちらを見る瀧くん。
あたしは恥ずかしながらも、瀧くんの腕の中に飛び込んだ。
背中に感じる瀧くんの暖かさ。
お腹に回る腕。
……鼓動がとても早くなる。
「さっきは、杏さんと食べて下さいなんて言ってごめんね。」
そう言ってあたしの、肩に顔を埋める。
「謝ってくれたから許す!
……それにしてもくすぐったいよ、さっきから瀧くん」
首に瀧くんの髪の毛が当たってくすぐったい。
「んー、我慢して下さい」
「瀧くんの意地悪」
だけど、それが嬉しかったりもする。
瀧くん意外に甘えん坊だったり?
「ねぇ瀧くん、今日一緒に帰らない?」
「いいですよ。
どうしたんですか?急に」
「…….朝一緒に学校来れなかったから」
あああ…言っちゃった…
面倒くさい女だな、とか思われたかなぁ。
「じゃあ連絡して下さいよ」
「……だって。
瀧くんも連絡全然くれないじゃん」
「すみません…それは…僕あまりまめに返すタイプではないので」
「じゃあ連絡したら返してくれる?」
「はい」
瀧くんはやっぱりそういうタイプだ。
何も聞かず1人で、くよくよしてたのがなんだか恥ずかしい。
「一ノ瀬さん….
僕、少し疎いところがあると思います。なるべく気にかけるようにしますが、もし言いたい事とかあったらちゃんと教えて下さいね」
耳元で言うからなんだか照れる。
「…瀧くんもね」
すると予鈴が丁度鳴る。
行かなきゃだ…
「一ノ瀬さん、行きましょう」
「……ま、待って」
そう言って立ち上がった瀧くんの背中に抱きつく。
「一ノ瀬さん?」
「あと、ちょっとだけ…」
まだ離れたくなかったから…
「一ノ瀬さん」
「え?」
ーーーーーちゅ
「へっ…」
瀧くんの方を見たと同時に額にキスが落とされた。
今度はおおおおおおおデコっっ!
恥ずかしくてあたふたしていると、
そっとあたしの耳元に口を近づけ…
「今度は口ね」
「……ーーーっっ?!?!!!」
額に両手を押さえ、キャーーーと叫んでる姿を ハハハ と笑いながら見ている瀧くん。
…あたしの心臓は持つのでしょうか?
そして瀧くんと付き合い始めて1週間が経った。
変わった事いえば、
「一ノ瀬さんおはよう」
「お、おはよう瀧くん」
瀧くんが少しずつタメ口で話してくれるようになりました。
まだまだ慣れないみたいでたまに敬語で話してくるんだけどね。
「ちぇっ、朝から見せつけてくれますなー、お2人さん」
和が嫌味ったらしく言う。
「ま、一ノ瀬泣かせたら速攻俺が奪うからな」
なななんてことをっ!
サラッと悠人くんに宣戦布告をする和。
「泣かせないです。
見てみて下さい、一ノ瀬さんは僕にベタ惚れですよ?」
あたしの瀧くんにを見る熱視線がバレタ。
「はーーー、うざいうざい。
邪魔者は消えますよ〜」
和は口をへの字にし、笑いながら違う友達の席に行った。
あと少し変わったと言ったらーー、
「ねぇ本当にあの2人付き合ってるのかなあ?」
「何か意外…一ノ瀬さんが瀧くんと付き合うなんて」
あたし達の様子を見て、教室中の皆んなが見る目が変わったこと。
あたし個人ではそんなだけど、瀧くんといると皆んなからの変な視線を感じる。
…なによ、皆んな瀧くんの事知らないくせに。
眼鏡とったらめちゃめちゃかっこいいんだからね?!
しかもめちゃめちゃ優しくて最高なんだから!!
チャイムが鳴り、皆んな自分の席に着く。
すると先生が入り、
「よーし、今からの時間は修学旅行についてだ。」
先生が言うとクラス中が ドッ と騒がしくなる。
やばい…もうそんな時期か…
あたし達の学校の修学旅行はいつも海外に行く。だいたい台湾。
「今日は、台湾での最終日の自由行動について班で話し合えよー。
どこ回るかなど、書いて先生に渡すように。」
そして席を4人くっつけ、話し合いが始まる。
「ねぇっ杏どこ行く?」
あぁ、もう最高!
この班本当に最高なんだけど!
杏に和に、そして瀧くん。
資料に目を通す瀧くんをジッと見つめる。
はぁ…カッコいい…
「こら花、瀧くんばっか見てないでどこ行くか決めるんでしょ?」
あ、やべ。つい…
「フッ」と笑い「見過ぎ」とツッコむ瀧くん。
…あぁ、幸せ。
「 やっぱさ、買い物したいし遊びたいじゃん?1.2日目なんかどうせ観光でしょ?パーっと遊べ所に行かない?」
そんな杏の意見にあたしも瀧くんも和も賛成した。