「はぁーー…」


「え?」


「告白の返事オッケーするのかと思ってました」



そう言ってブランコに座りながら、太ももに肘をつき、口元を両手で覆う。




「あたしが告白オッケーしてたらどうしてた?」



はっ、



「ご、ごめん!
あたしったら…変な事聞いたよね!
気にしな「止めてます」




……え?



「和くんの所に行かないように、止めてます。」


「えっ、瀧くーーーっ」





え、今あたしの、頬にーーー、



状況が理解できない。



だってあたしの頬に瀧くんの唇がついているからーー…



頬にキスされて、る?















チュッ と離れる時に響く音に心臓の鼓動が早くなり、一気に恥ずかしさに覆われる。




「……あ、の」



緊張してしまい声が震える。



何で…キスしたのーー?

その一言が言えない。





「すみません…

本当に….あの….軽率でした。」



「…え、いやっ」


「ほんとに、ごめんね」




その顔はあまりにも反省していて、なんだかあたしが悪い事したみたいに見えた。





「帰りましょうか」




あたし達はただ、お互い何か話すわけもなく無言で歩いた。














それから、あたしをちゃんと家まで送ってくれた瀧くん。




「……では」




え…


そのままこちらを振り向かず歩いていく瀧くん。




「ま、待ってよ…」


「……」




あたしが呼びかけると、歩いていた足をピタリと止めた。




「なんで…

なんでキ、キスなんか…」


「すみません…」



俯いて、あたしとは目線を合わせない。




「あたしは何でって言ったの!!
謝って なんて言ってない!」


「……」


「何で何も言わないの…気持ちがないならあたしにキスなんてしないでよ!」




そう叫んで、勢いよく家の中に入った。











ひどい…ひどいよ瀧くん…



あたしの気持ちなんて知らないくせに。




「好きなのに…っ」




好きな人からのキスは嬉しいはずなのに…すごく悲しい。



泣きたくもないのに、涙が勝手に溢れてくる。





「うう…っ」




瀧くんのバカ…












そして月曜日。


こんなにも行きたくない学校は初めてだ。




「げ、花その目どうした?」


「うん…泣いたから。
そんなに腫れてる?」




日曜ゆっくり冷やしたのに…ずっと寝てたからかな?

あまり治ってなかったみたい。




「泣いたって花…どうしたの?もしかして、瀧くん?」


「うん…あのね」




杏に土曜日の帰りの事を全て話した。


思い出すだけで、ドキドキするし…同時に悲しくなる。




「瀧くん何考えてんだか!!
あたしから言ってあげようか?」


「い、いいいい!!!」


「ほんと?

でもさ…ちゃんと瀧くんの気持ち聞きたくないの?もっと問い詰めないと」


「うん…」


「瀧くんもそんな器用なタイプじゃなさそうだし、きちんと話してみた方がいいよ?」


「そうだね…ありがとう杏」




聞いてみないと、

















すると無言で隣の席に座る瀧くん。



わわわ、どうしようっ、


気まづい…




「杏っ、あたしちょっとトイレ」



行きたくもないのに気まづすぎて、教室を飛び出した。



ついた先は中庭。

中庭のベンチに座る。




「どうしよう…」






「なに悩んでんだよ、俺の事?」


「へ?」



「よぅ」と隣に座ってきたのは和。


あぁ…和もなかなか気まづい…




「元気ねぇじゃん。

俺の告白のせいで困ってたり?」



サラッと”告白”という単語をぶっこんでくる。










「え、違う?
それはそれで残念だけどー。」



1人でぶつぶつ話してやがる。




「もしかして…瀧?」


「ブッーーーー!!!」




やべ、図星つかれて思いっきり分かりやすいリアクションしてしまった。




「……何かあったの?」



珍しく真面目トーンで聞いてくる和。




「でも大したことないから…
和は 気にしないで」


「なんだよそれ、一ノ瀬さぁこの際聞くけど、瀧の事好きなの?」


「え、ええ、なななんで?」



あまりにも動揺してしまい、それに恥ずかしくなりベンチから立ち上がる。




「好きなの?」


「……」


「……和には関係ないよ」


「あるだろ!

俺はお前の事が好きなんだぜ?関係大ありだっつーの」



和も立ち上がり、あたしに向かって叫ぶ。




「俺の、気持ち考えろよ」



あ…


和も今のあたしと同じ気持ち、なんだ。










「和…」


「返事聞かせて、決まってるんだろ?」


「…っ」




さっきとは違って優しい表情を浮かべる和。



「いいよ、言って」


「……和あたしっ…あたしねっ…瀧くんが好きなの。だから和とは付き合えない…ごめんっ、ごめんねっ…」




泣きながら深く頭を下げる。




「いいよ、何となく分かってたし。
泣くなよ一ノ瀬…」


「うっ…うん…」


「はぁー、でも何で瀧なんだよー…俺なら絶対幸せにできるし、泣かせもしないのになー」




ハハハ、とどこか悲しく笑う。











「瀧くんは優しいよ…よく喋るし、意外と笑うし、皆が知らないだけ。」


「そっか…んまぁ、これからは前通りダチとして宜しくな一ノ瀬」




和….きっと辛いはずなのに笑顔であたしに言う。




「フラれたりしてな、ハハハ!」


「うるさいなぁー!黙れ和!」


「そんないちいち返すんだったら早く瀧んとこい行けば?」




想い…伝えなきゃだよね。




「うん!ありがとう和」



和があたしに頑張ったように あたしも頑張るんだ。


ちゃんと話すんだ。