あたし、オワッターーーー。




「た、瀧くんか、よろしく〜…」


「……」



ですよね。




そう、あたしの隣の席はこのクラスで1番暗くて地味でとにかくあまり皆んなと話さない瀧悠人くん。


眼鏡にすごく伸びてる前髪。

とにかく、暗い。


正直関わりたくない。

皆んな、瀧くんのことを変な目で見ている。つまり…まぁその、関わりづらい。


このクラスになってしばらく経つけど、今だにどんな人か分からない。


謎の男の子。



普段は本ばっかり読んでいて、お昼休みには必ず教室からいなくなる。



友達はいない、と思う。









「ブッ、なにお前瀧の隣かよ」



ギャハハと笑う和。



「あたしだって嫌だよ…」


小声で瀧くんに聞こえないように言う。



「まぁドンマイだな!
瀧もこんな女の隣とか絶対嫌だろ?」

と和の野郎は瀧くんにまで話しを振る。







「関係ないので」






バッサーーーーーーーリ。




「ギャハハハハハ、一ノ瀬ドンマイ!関係ないだって!!ッッアハハハ」


「っっっあたしだって、瀧くん暗くて地味だから関わりたくないし!」



つい、和の笑い方にイライラしてしまってこんなことを言ってしまった。



すると、

「関わりたいなど言ってませんけど。
関係ない。と言いました」



眼鏡の奥からジロッとあたしを睨む目をあたしは見逃さなかった。




「……なによ」













前の席の杏。

斜め前の席の和。

そして、隣の席の瀧くん。










あたし…やってけるのか?

















席替えをしてから1日目。



隣の席の瀧くんは授業中以外は相変わらず本ばっかり読んでいる。


ったく、本ばっか読んで…この人誰かと話したりしないのか?




「あー、休み時間早!次英語じゃん。先生来たし前向くわ」



休み時間ぺちゃくちゃ杏と女子トークをするのが日課。


杏には年下の彼氏がいる。
同じ高校のサッカー部の男の子。


可愛い見た目で、外見ふわふわしてる杏とすっごくお似合いなんだ。

その彼氏の話しをひたすら聞いている。




聞いては、「花は最近どーなのー?」と振られ、独り身だからそんな話題はない。


彼氏…いつからいないんだろう。


確か中3の卒業式の日にフラれたんだっけ。思い出した。


ずっと好きだった帰宅部のプロの佐々木くんだ。


しかもフラれ方も最悪。


「高校に入ったら可愛い子とかいっぱいるかもじゃん?」だっけ。


今考えたらなーんであんな奴と付き合ってたんだろう。











そんな事言われてボロボロ泣いてる横で和が爆笑してたっけ。


あったなぁ…そんなこと。




「じゃあ、次は一ノ瀬!ここの英文訳してみろ!」


「……ーーーッッ!!!」




っっっやっば!!!!


つい英語の授業の事忘れてて、1人で昔の最悪な思い出に浸っていた!!!!!!




「あ、えっと…先生すいません。どこでしたっけ?」


「一ノ瀬…ちゃんと聞いとけ。
12ページの上の段の英文だ」



えっと…12ページ…12ページ…










「私は、将来キャビンアテンダントになり世界を旅する事が夢です」



「…ーーぇ」




瀧くんが小声でボソっと囁く。







あたしは瀧くんが言ったことをそのまま答えた。



「わ、私は将来キャビンアテンダントになり世界を旅する事が夢です」


「正解だ」




え…なに、あたし瀧くんに助けられた?




チラッと横を見ると真剣にノートを取る瀧くんの横顔。







「………………………なに」



ーーっ、やばい見すぎた。




「いや、その…ありがとう、です」


「別に」





え、なになになに。
瀧くんってそんな感じだっけ?


てっきり、ガン無視されるかと思った。










ってか、あたし瀧くんと話してる?!



「ーー!」


ブンブンと顔を左右に振り向く。





「ふぅ」

よかった。
あまりクラスの皆んなには見られてなかったみたい。


瀧くんと話すと変な目で見られそうで…














そして、時間は過ぎあっという間に放課後になった。



「一ノ瀬、ちょっと…」



帰る準備をしていたあたしに声をかけたのは隣のクラスの坂村くん。





「杏、なんか呼ばれたから今日は先に和と帰ってて」


「フッ、告白ですな」


「っっっっはっ?!?!!!」



さしすせそそそそそんなバカな!!




「え!坂村くんあたし一回も話した事ないんだよ?!普通に何か用があるんだよ」


「ふーーん。どうだかね。また結果明日にでも教えてねーん」




杏はそう言って教室から出た。




廊下であたしを待つ坂村くん。


え、ほんとに告白?

え、このあたしに?



















「俺…さ、ずっと一ノ瀬の事可愛いなって思ってて…その、よかったらお友達からでいいのでお付き合いしてもらえませんか?」



















ビンゴだったーッッッ!

















あの後坂村くんに人気のない図書室に連れてかれ、

2人っきりっていうのを確認して、今この状態。



どうしよう…
告白されるなんて初めての事だから何て返していいのか分からない。



「っーー」

チラッと坂村くんを見ると、今にも茹で上がりそうなタコのように顔は真っ赤だ。



こんなに真剣に、勇気を持ってあたしに告白してきたんだ。


顔は、中の中あたりか?
性格は…これから知っていけばいいのかな。



こんなあたしに告白してきてるんだ。

こんなチャンス逃していいの?!一ノ瀬花!!!!!!



プロの帰宅部の元カレと違っていい人そうだよ?いいの?いいの?





「一ノ瀬さん、ごめんね。困ってる、よね?」


「え?」


「俺と一ノ瀬さん話した事もないのにこんな事言われて」


「いや、そんな事ないよ。そう思ってくれてるって嬉しいよ…こんなあたしを」


「一ノ瀬さん」


「は、はい…」



一歩大きくあたしに近づく。