「...その.....」

なかなか答えようとしない斉藤に杏はイラついた。

(コイツは本当に見た目が怖いだけだな)
(あと声も)

「なあ、答えなよ。学級委員長サンが頼んでやってんだぞー??」

まだ斉藤は話そうとしない。
杏は最終作戦に出た。

「...答えられないほど悪いことしてたのか?」

杏は心配そうな声をして問う。

「なっ...!!そんなことしねーし!!」

「じゃあ、言えるだろ?」

「はあ?なんで何でも言わなきゃいけねーんだよ…」

まだ斉藤は言おうとしない。
杏は本気で心配になってきた。

(本当に悪いことしたんじゃないのか...)

杏が黄色い目でじっ、と斉藤を見つめる。二人の間に静かな時間が流れる。
気まずくなり、先に口を開いたのは斉藤だ。

「.....人と話してただけだよ。」

「誰と?こんなに話そうとしないと言うことは変な話でもしてたんだろう?」

「橋本と話してただけだよ。」

(なるほど、納得がいった。)

「うなちゃんについてか?」

「あっえっと...そうだ...」

斉藤が顔を再び赤らめた。
斉藤は同じ学年の雨川うなに恋をしている。うなは学校のアイドルと言われているほど可愛く、優しい子だ。
だからうなといつも一緒にいるロシア人とのハーフ、橋本 学(はしもと がく)に斉藤は話を聞いていた。

(橋本か.....)

「どうせうなちゃんの話でもしていたんだろう?」

杏が1歩、斉藤に詰め寄る。

「そうだよ!!!!悪いか!!」

斉藤はもう開き直った様子だ。