「杏...」

斉藤は呆れた顔でこう言った。

「お前は、またセンセーに言われて来たのか...」

「そうだ。いつもお前がサボるから、私は大変なのだぞ？」

「.....」

斉藤は申し訳無さそうにだまった。

そして杏はある疑問を思い出した。

「犬。今日は何故屋上に...？ いつもは図書室か、保健室に居るだろう？」

そう。杏は学級委員長。毎朝のように先生に斉藤を連れてこいと頼まれている。
斉藤は晴れの日は図書室。雨の日は保健室に大体いるのだが、今日は珍しく屋上だ。

質問に対し斉藤は少し頬を赤くした。斉藤はいつもマスクをしていて、片目を緑がかった長い髪でいつも隠している。そのため表情を見分けるには毎日話して居るもの、杏にぐらいしか分からない。