「俺は、『大工』の息子さ。『セイウチ』!!」

今もまだ絶えぬ殺気を放ちながら、『大工』の息子と名乗る少年は、『セイウチ』を睨みつけた。
『セイウチ』と『大工』。その単語を聞いた途端、『セイウチ』と呼ばれた太い腹の男はダラダラと冷や汗を流し始める。その顔は恐怖に塗られ、目を見開いて少年を見つめる。

「『大工』だと……」

体中を震わせているのは、恐怖からか。声も震えて言葉は聞き取りにくい。
が、その言葉を聞いて少年の唇はニヤリと歪められる。やっと思い出したか、というように。

「あぁ、そうさ。アンタが殺した『大工』だ。」

「馬鹿な。アレは私のせいじゃ……」

「アンタの経営しているカジノ…『裏』の仕事を、俺の親父は手伝っていた。でも、親父は嫌気がさして仕事を止めようとしたのに…」