「お疲れ様です。」

「お疲れ。」
 廊下ですれ違う社員さんに挨拶して、一番奥の会議室へと私は向かう。

お昼をとっている人が多いのか、一人すれ違っただけで特に他の社員さんとすれ違うことはなかった。


 コンコン――会議室の扉へ数回のノック。
ドアノブに特に入室禁止の札はぶら下がれていないし、誰もいない様子なので入室をすぐに決める。

「失礼します。」
 案の定、中へ進んでも誰もいなかった。

上座を中心に、手渡された書類をテーブルへ置いていき作業を終える。


 12時30分か。
会議室を出る前に、壁にかけられた時計で今の時刻を確認した。

今日のお昼は会社だけど、明日のお昼は……速水さんといるのかな。
なに、食べるんだろう。


 仕事から解放されるとすぐに始まる、明日のデートのこと。

この2週間は携帯の文面でちょっとだけしか連絡を取っていないせいもあって、話せている感じはあまりしていない。

この2週間分、喋れたらいいなぁ。
けどうまく喋れるかな。


どきどき、考えているだけで心臓が跳ねてくる。


でもこうして妄想している時間も結構楽しい。
速水さんに言ったら、変態かよってからかうだろうから絶対言わないけど。

速水さんも妄想とかしてくれてるかな…。

って、速水さんこそ素直に白状してくれないか。


 苦笑をこらえ、明日のことを考えるのもほどほどにして、お昼をとろうと私は会議室の扉の柄に手をかけた。

廊下へ出ると給湯室の扉が大きく開いて、廊下にまで扉が飛び出しているのが見える。