「毎日とはいかないだろうけどさ、」

「はい?」
 今度は何だろう?
かきまわれた髪を手ぐしで戻し始める。


「こうやって一緒に帰る?」


「え?」
 彼の急な提案に一瞬手が止まった。

「まぁ……」
 再び手を動かし始めて、

「いいですよ?」
 ぼそっと言葉を落とす。


可愛くない返事。
いくらびっくりしたからとはいえ「いいですよ」じゃなくて、「嬉しい!」とかって言えたらいいのに。

「またご飯も食べに行こうか。」
 そう速水さんが笑ってくれているからって、甘えるのは違うよなぁ……。


速水さんは私のどこが好きなんだろう。

だってかっこいいし、優しいし、もてるし。
そりゃたまに意地悪だけど、そんなところも結構良いというかなんというか……って私はMでは決してないけど。

時々すごく不安になる。

いつか愛想つかされちゃうんじゃないかって。
つまらないって思われちゃうんじゃないかって。

これって、恋してる女の子だったらみんなそう?
特有の病気……?


「市田?着くよ?」

「あ、はい!」
 ばか、わたし何考えてんだ。

巡らせていた思考にあわててストップをかけて、アパートの駐車場へと入っていく様子に焦点を当てる。