「市田さんって今何歳?」
 飲み終えてすぐ彼女は私に話題を振ってきた。

同時にお肉と野菜がテーブルに運ばれてくる。

「今年25になります。」
 そう答えながら、店員さんからお皿を受け取る。焼くところはテーブルにふたつ並んでるから、それぞれ二つずつ頼んでるらしい。

「そんなに若いんだ!
あ、私は速水たちと同期って言ったっけ?」

「はい。」

「しっかりしてるから、もっとベテランさんなのかなって思ってたの。
偉いね。」
 ジョッキは片手そのままに、彼女はにこりと微笑んだ。

「あ、いえそんな!」
 顔が赤くなるのが自分でもわかった。それは決して今飲んだお酒のせいじゃなくて。

こんないきなり褒められると思ってなかったから、ちょっとびっくりしちゃったんだ。
一色さんみたいなできる人にそんな風に言って貰えると思ってなかったから。

あとやっぱり凄い美人だから、別の意味でも照れちゃうのかも。


「どう?速水はともかく、長嶋とか迷惑かけてない?」

「え?」

「長嶋なんて不安要素しかなくて。
速水は尊敬できるところいっぱいあるけど。」
 じろーっと疑り深い目をしてみる彼女に

「おい、なんだよその言いぐさは。」
 黙って聞いていた長嶋さんもそこで声をあげる。

「だってあんたがまだ入りたてのころ、速水と私でどんだけ仕事カバーしたか。
本当大丈夫?
ちゃんと教えれてるわけ?」
 まだ飲み始めたばかりだというのに、早々に話が白熱してきた。
いつの間にやら仲裁している内川くんも若干大変そうだ。

 先週の飲み会もこんな感じだったのかな?
ふたりで言い合いしているのを横目に、ちらりと私は速水さんを見た。

「タン食べる?」

「うん。」
 いつの間にやらトングを握ってる。どうやら肉焼く係に徹するらしい。

「この間もこんな感じだったから。
まぁ適当に流しといて。」
 こそっと耳打ちしてきた。

「昔から、お二人ってこうなの?」
 気になって二人には聞こえない声でそう聞いてみる。

「うん。
まぁ酔いが回ると一色は逆に静かになるから。
もうちょっと待ってて。」
 さすが同期?長嶋さんだけでなく、一色さんの取り扱い方も熟知してるらしい。

まあでも当たり前ちゃ当たり前か。
同期以前に、ふたりは付き合ってたかもなんだから。


速水さんが焼いてくれたお肉を私は食べた。