そんなこんなをしてるうちに。
「お!あれ吉田と真依のペアじゃない?」
ゴールから声が聞こえた。
ゴールはもうすぐだ。
____この時の私は忘れていた。
「ゴールだって吉田!もうすぐだから急いで!」
そう言ってバシバシ吉田を叩く。
完全に、忘れていた。
自分が…………
_____吉田におんぶされているということに。
「え!?なんで真依吉田におんぶされてんの!?」
ゴール直前。
聞こえたその声。
だが時すでに遅し。
私が再び現状理解をした時、
私は吉田におぶられたままゴールにいた。
「なんで!真依!?どうしたのあんた!」
先にいた莉緒ちゃんが、
未だに吉田の背中の上にいる私にすごい勢いで聞いてきた。
「……っ!!とりあえず吉田下ろして!」
「は?足まだ無理だろ?」
「うっさいわ下ろせバカ!!」
……ほらぁ!! みんなめっちゃ見てる。
男子も女子もガン見。。
そして瑞希ちゃんからの視線が超絶痛い。
しかももうすぐ廉くん来ちゃうし!!
パニクって「下ろせ」と連呼する私に、
吉田はいかにも落ち着いた様子で
「怪我人下ろすわけには行かない」 って!
恥ずかしさと吉田なんかにおんぶされているという自分への腹立たしさでおかしくなっていると、
追い打ちをかけるかのようにやってきた廉くん。
廉くんだけには見られたくな…………
「真依ちゃんと吉田、え!? 2人……え!?」
手遅れだ。 これは致命傷。
廉くんに恥を晒した私は
ここで記憶が飛んでいった。
「最悪。吉田むり。吉田まじでむり。」
波乱の肝試し大会から無事帰還。
……いや、全然無事じゃないけど。
就寝準備に入って即布団へダイブした。
「真依さっきからそれしか言ってない」
「ね。もう30回は聞いたわ」
メイクを落としながら呆れている2人。
瑞希ちゃんは寝息を立てて寝ている。
……はやっ。
「だって!なんか今日吉田調子乗ってたもん!」
平凡野郎のくせに。ふざけんな!
「ただおんぶしてくれただけじゃん!あんたが怪我したから気を利かせてくれたんでしょ!」
「いや、手も繋いできたし」
「は!?」
「え!?手繋いだの!?」
目を丸くする2人を見て、やらかしたことに気づいた。
ダメだ。これを言ったらダメなやつだ。
余計勘違いされるじゃん……!!
「っ今の忘れて!」
「いやむりむりむり。詳しく頼んだ」
「あたしも聞きたいー!」
……オワッタ。
結局私は今日起こった全過程を話した。
すると。
「え、それ普通に吉田あんたに気あるでしょ」
「あたしも思う……」
「2人して何!?ありえないから!!」
吉田が私に好意を…………?
考えただけで吐きそうだわ!!!!
「だって気のない子に手繋ぐ?いくら女子が怖がってたとしてもさあ」
「吉田はそういう奴なのかもしれないじゃん!あの顔じゃどうせモテないから、弱った女子なら俺と手繋いでくれるんじゃないかみたいなさあ!」
「ずいぶん饒舌だね今日」
「だって勘違いされたくないからね!!」
ほんとにごめんだ。
吉田との噂が流れたらたまったもんじゃない!
廉くんなら大歓迎だけど!!
一気に喋ったせいで喉が乾いた私は
布団から出てさっき買ったジュースを口にした。
すると莉緒が。
「てか真依顔赤くない?吉田効果?」
そんなことを言ってきたわけで。
「ぶっ…………!!!」
あまりの衝撃に飲んでいたものを吹き出した。
「……汚っ!なに吐き出してんの!?」
「莉緒が変なこと言うからでしょ!?」
愛音ちゃんが即座に床を吹いてくれた。
さすが天使。
……って今はそれどころじゃない!
愛音ちゃんにお礼は後で言うとして……。
「てか吉田効果ってなに!」
そうそう。本題はこれ。
吉田効果って。
あの平凡が人に影響与えられるの!?
むりでしょ!!!
「吉田のこと話し始めてから徐々に顔赤くなってったから」
「はあっ!? そんなのあるわけないじゃん!」
吉田ごときで顔赤くなる奴とか頭おかしいとしか思えないよ私!
それくらい恋愛対象には入らないもん!
「どうだかー?だって実際今顔真っ赤じゃん」
そう言われて私は洗面所に直行。
鏡を見ると……。
なんということでしょう。
そこに写っていたのは顔を真っ赤にした私ではありませんか!
まるで新鮮なトマトかのように、
燃え盛りそうな赤に染まっています。
……うそだ!これは事故!
「どうー?赤かったでしょ?」
ニタニタ笑いながら歯を磨く莉緒が言ってくる。
「いやっ、これは気温のせいだよ」
とは言っても今日の気温10度ちょいなんだけどねっ。
「またまた〜。認めなさいよ」
「は!?なにを!」
「吉田のことが気になり始めてることに決まってんでしょー!」
……いや、え?
は!?
「吉田を気になり始め……っ!? ありえない!!!百パーありえない!!!いや千パー!!」
ほんと莉緒ちゃんこそ今日おかしい。
「だって世界を代表する平凡と呼ばれるあの男だよ!?そんな奴気になるわけがない!」
「むしろ興味ZERO!!皆無!!!」
ごめんね吉田。
ディスりまくってるけど、
これが現実だ。これが本心だ。
私が夢見るのは廉くんみたいな王子様なわけでっ!
可もなく不可もなくみたいなパッとしない男は全然!全然望んでないしっ!