空がオレンジ色に輝いている。

彼女の説明が下手くそなせいで、もうすっかり日暮れだ。

正直、聞く方が疲れた。

彼女の説明を、僕が分かりやすく説明しよう。

これ以上長引かせるのは、僕としても嫌だ。

つまり、彼女は異次元へ行く様に、透明人間になってしまったという。

漫画か!と僕はとてもツッコミたかった。

そして透明人間になった後、彼女は透明人間になる前の記憶を、ほぼ無くしてしまったと言う。

彼女が覚えていた事は、自分の名前と自分が透明人間になった事、そして自分の心残りを解決すれば、元に戻れるということだけだった。

何故、心残りを解決すれば、元に戻るのかは、彼女にも分からないという事だった。

まぁいきなり、透明人間になってしまったのだから、戻れる理由が分かっているだけで凄いとは思う。

だが、この話はそれほど上手くいかないのだ。

一番大事な、彼女の心残りが分からない。

彼女は、自分が忘れた過去にあるのではないかと、思っているらしい。

そして僕に、忘れてしまった記憶を取り戻す事、更に自分の心残りを解決しろという。

なんと無茶苦茶な話だ。

何故僕が、見知らぬ女の子の望みを叶えなければならないのだ。

僕は、誰かの為に命を張ったり、時間を費やすような事は、なるべく避けていた。

それなのに、僕から出てきた次の言葉は誰にも予想出来なかっただろう。

目の前にいる、透明人間の彼女以外は。