彼は少し意地悪そうに言って私をからかう。
ううん、彼は聞きたくないっていう私の気持ちに気が付いてくれたんだ。
意地悪なのに優しいんだ…。
意地悪に優しいって矛盾しているけど、本当にそう思った。
カップルは1時間も留まってイチャついたあげくに、図書室を微妙な空気にして別々に帰って行った。
「はぁー、ほんと良く来るよねぇ。見えないのになんか隠れなきゃいけない、こっちの身にもなって欲しいなぁ。」
彼がぶつぶつ文句を言っているのをよそに、私は感じている違和感について考えていた。
その違和感とは幽霊である彼に触れられるという事だ。いつもだったら、ぶつかりそうになっても体をすり抜けてしまう。
なのに彼にはちゃんと触れられる。
まるで生きている人間のように。
「━━━…ぇ、ねぇ、話聞いてる?」
「えっ!あ…ごめんなさい、なんですか?」