「確かに雪姫ちゃんは他と違うよ。でもね、それは雪姫ちゃんに限った事じゃない。人間は一人一人違うんだよ。」
「じゃあ…お兄ちゃんも…?」
「そうだよ。だから何を言われても、気にしなくていいの。大切なのは自分が自分でいる事だよ。」
「そっかぁ…。ありがとう、お兄ちゃん!」
すっかり泣き止んで、万遍の笑みで言う君を見ると、どうしようもなく可愛く思えた。
「よしよし。雪姫ちゃんは強い子だね。」
そして、それは早くも恋に変わって行った。
出会って3年が過ぎた頃、中1になった俺は親の都合で引っ越す事になった。
「行かないでっ…!」
「ごめんね、雪姫ちゃん……。」
恐らくもう二度と会うことはないだろうと思っていた。
あれから何だかんだあったけれど、こうしてまた言葉を交わす事が出来た。
けれど君は、まだそれを知らない━━…。
俺は雪姫ちゃんを少しキツく抱き締める。
「君の体温を感じたい━━━…。」
俺の体は冷たい。人の感覚を、体温を、感じる事も与える事も出来ない。
君の規律正しい寝息が聞こえて、
切ない気持ちが一気に押し寄せてくる。
「ごめんね、雪姫ちゃん━━━…。」
俺はもうすぐ君の前から消えなきゃならないんだ━━━…。