あの事故から、三年が過ぎてしまった。

 彼女から連絡も無く、連絡先も分からないままだ。


「先輩! 又、よろしくお願いします。まあ、俺が面倒見るんですけどね」

 神谷が笑って立っていた。


 そう、今日から神谷が東京へ異動となったのだ……


「おお! 忙しいから覚悟しておけよ!」

 僕は又、神谷と並んで仕事が出来る事が嬉しかった。


「先輩、今度家に遊びに来て下さい。息子、可愛いですよ。」
 神谷が嬉しそうに言った。


 神谷はもうすぐ二児の父になる。

 益々、凛々しくなり落ち着きの出た神谷の姿に、時が経っている事を感じた。


 しかし、僕はあの事故から、すべてが止まったままだ……


「おお、是非、会いに行くよ」

「でも先輩、息子に恋愛のアドバイスはしないで下さいね…… だけど、勉強方はお願いします」

「あのなぁ。なんでニ歳の子に恋愛のアドバイスするんだ? 勉強どころか、遊びもこれからだろ?」
 僕は呆れて言った。


「そうですか? 俺は毎晩息子に語っていますけどね…… カッコいい男の生き方を!」


 神谷の言葉に僕は笑った。


 久しぶりに笑った気がした