彼女を乗せ、僕は彼女の家の方角へと車を走らせた。


「急に伺って、ごめんなさい…… 怒っています?」

「怒ってなんかいないですよ。嬉しかったです。でも、連絡ぐらいくれても…… 準備という物が……」

「お休みだし、お出掛けしているだろうな? と思ったから…… まさか、あんな怖い顔するなんて思わなくて……」

「怖い顔していました? 寝てたからかな?」
  
 まさか、あなたに見とれて放心状態だったとは言えない……


「電池なら直ぐそこで買えるのに、家までは距離ありますよね……」
 彼女は申し訳なさそうに言った。


「いいですよ。買い物にでも行こうと思っていたので……」

「何買うんですか?」

「ネクタイとか……」
 僕は咄嗟に口から出てしまった。


「えっ! 私も一緒に行っちゃダメですか?」
 彼女が運転する僕を見た。


「あっ。いいですけど…… いいんですか?」
 
 僕は、どぎまぎしいてしまい、良く分からない答え方をしてしまった。


「ええ」

 彼女は嬉しそうに答えた。