入り口のドアが開き、「カランコロン」とドアベルが鳴り彼女の姿が現れた。

 僕は慌てて立ち上がり手を上げた。

「こっちです」僕のあまりの大きな声に、マスターと数人の常連客が驚いた表情で僕を見た。

 しかし、僕が手を上げた相手の彼女の姿を見ると、皆の顔がふっと笑顔に変わった。

 彼女は黒のパンツに薄いピンクの膝までのニットで爽やかな笑顔で入ってきた。


 いつの間にか、マフラーの要らない季節になっていた。


「ご注文は?」

 マスターがニコニコと、テーブルにお冷を置いた。


「ブレンド」
 僕は答える。


「えーっと。カフェオレ、お願いします」
 じっーとメニューを見て彼女が言った。


 僕は緊張して、何から始めればいいのか? モタモタしてしまった。


「お忙しいのにすみません…… あの…… お月謝どうすればいいですか?」

 彼女の思ってもいなかった言葉に僕はびっくりしてしまった。


「そ、そんな…… 僕に教える程の力がるか分からなし、僕の勉強でもあるので、気にしないで下さい」

「でも…… そういう訳には……」
 彼女は恐縮して言った。


 でも、僕は彼女からお金を貰うなんて、絶対に嫌だった。

 ましてや、彼女は一人暮らしのOLで経済的にだって大変であろう…… 

 僕はどうだ? 実家から通う中年オヤジ。

 彼女から月謝なんてカッコ悪すぎる。


「やってみてから考えましょう」
 僕はこの話を打ち切った。

 緊張の中、あっと言う間に二時間も経ってしまった。


 彼女は何度も僕に頭を下げ帰って行った。