大分酔いも回って来て話も盛り上がっていた。

「雨宮さんは、どんな男性がタイプなんですか?」
 美也が聞いた。

「そうだなぁ。顔が良いに越した事は無いけど、やっぱり、自分をちゃんと見て好きだと思ってくれる人かな? 私、あんまりちゃんとした人じゃないんですよ。 でも、男の人って、自分の理想と違うと嫌がって、すぐ自分の理想に当てはめようとするじゃないですか? それが窮屈なんですよね。結局、思った子と違うって振られちゃうんですよね……」


「あ―。それ、分かるなあ。例えばどんな所が理想と違う、って言われるの?」
 美也が興味あり気に聞いた


「う~ん。そうそう、前に付き合っていた彼と、新年の初売りの福袋を買いに行った事があるんですよ。私どうしても欲しいブランドの店があって、朝早くから並んで、デパートのオープンと同時に目的の店にダッシュして、人混みの中かき分けて限定の福袋をゲットしたんです。嬉しくて、彼の元にもどったら、『スゲーパワー』って嫌そうな白い目で見られたんですよね」
 彼女が口を尖らした。

「ぷっ」
 僕を含め、三人が吹きだした。

「やっぱり、ダメですか?」
 彼女は今度は頬を膨らました。

「違う、違う! 僕も見て見たかったな、って思っただけ…… 想像しちゃいましたよ…… でも、理想と違うとか、がっかりした訳ではないですよ」
 僕はつい言ってまった。

「でも、その彼は会う人皆に、スゲーパワーとか馬鹿にして言うんですよ。それからかな? 私が張り切ったり、活発に行動したりするのが嫌みたいで、俺の許可なく色々するなって言われて、このままじゃ自分が成長出来ないし、自分が自分で無くなる気がして別れましたけど……」
 彼女はため息混じりに言った。

「それは別れて正解よ! 結局その人は、雨宮さんが自分より目立つのが嫌だったり、雨宮さんを自分の手の中に入れておきたかったり、独占欲が強かったんじゃない? それじゃあ、雨宮さんの良い所を解ってない、って事だと思うけどな?」

 美也が力を込め僕を見た。

 
「僕もそう思いますよ」
 僕は慌てて言ったが、本当にそう思った。

「雨宮さんは、もし相手が自分の理想と違ったらどう?」
 神谷が一歩踏み込み尋ねる。

「そりゃ、優しそうな人だと思ったら、お金騙しとったり、真面目そうな人だと思ったら、暴力的だったりとかは嫌ですけど……」

「そんなの当たり前です」
 僕はきっぱりと言いた。

 その言葉に、彼女は笑った。

「でも、怖い人かな? と思ったら、子供や年寄に優しかったり、格好良くてクールな人が、家でテレビ見て大笑いしたりしたら、なんか胸がキューン、ってなっちゃいますけど……」
 彼女は頬に手を当てた。

「それじゃあ、見た目は頼り無くて目立たない人が、実はバリバリ仕事出来る優秀な人だったらどうですか?」
 神谷が又、質問した。

「そういう人素敵ですよね! もっと言えば、好きな人の為には強くなれるとか? 最高! ドラマの世界ですかね?」
 彼女と美也は、

「きゃ―」

 っと、声を上げた。


「意外に近くに居たりするかもしれませんよ?」
 神谷はそう言って僕を見た。

 僕は慌てて神谷から目を逸らした。

 彼女は皆の会話によく笑っていた。でも僕は少し気になっていた。
 この間より、彼女の飲むペースが速い気がしたのだ。

 楽しい時間はあっという間に時間は過ぎてしまい、会計となった。

「ごちそう様です」
 神谷が僕に頭を下げた。

「おう!」
 僕は伝票を持って会計に向かった。

「私も払います」
 と彼女が後ろを付いて来た。

「いいの、いいの。先輩は今日おごる約束なんですから……」

「でも、私は……」

「いいよ」
 僕は彼女に微笑んだ。


「すみません。じゃあ、二次会は割り勘でお願いします」

 彼女の言葉に僕の心は弾んだ。

 やった―。二次会もあるんだ! 僕は心の中で叫んだ。